片道切符

文字数 462文字

 駅で改札をくぐったとき、床に紙の切符入れが落ちていた。青色に白抜きでロゴが入っている。自分も同じものを持っている。駅の切符売場やみどりの窓口に置いてあるものだ。

 ポイ捨てかと思って拾った。しかし中に切符が入っていた。触ったとき切符特有のしっかりした感触があったからだ。開けると確かに穴の開いた切符が、乗車券特急券の2枚で入っていた。行き先の駅名は知らない漢字で読めなかった。

 きょろきょろしてから駅員の人を見つけ、事情を話した。ありがとうございます、と言って駅員は切符を確認したあと駅員室に戻っていった。

 心配になり自分の切符を確認する。確かにあった。乗り場を確認して、階段を上がる。そこにホームから駆け降りてきた人が来た。

 切符、落ちてませんでしたか、と聞かれ、さっき駅員さんに……と言い終わらぬうちからその人は走っていった。

 ただ、自分は聞いた駅名に違和感を覚えた。あの漢字がそういう読みなのか。

 新幹線が来るまでまだ時間があった。待ち時間にネットでさっき聞いた駅名を検索したがヒットしなかった。

 ――黄泉比良坂(よもつひらさか)、と。
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