第24話 もう一つの見方

文字数 1,283文字

 一日の長い時間が過ぎた。
 黒田は終始おしゃべりをして、女性は下界の人と天の園の人でもどちらでもいいが、とにかく面白い女ならどちらでもいい。そんな話をしていた。
 食事は黒田が持っていた。珍しい下界の食べ物だ。それはハンバーガーレストランから釣り糸で釣ってきたと言われる代物で、隆は以外に好きな食べ物だった。飲み物は同じく釣り糸で釣ってきたダイエットコーラなどを食していた。
「あ、そうだ。24時間のお姉さんに電話してみては?」
 助手席の黒田の唐突な言葉に隆は首を傾げた。
「24時間のお姉さん?」
「そんなことも知らないなんて……。相当に遠いところから来たんですね。……いいですから、電話は私の携帯を貸しますからかけてみてください。多分、娘さんのことが解るかも知れませんよ」
 隆は黒田の渡す携帯を見つめた。
「番号は0024ですよ」
「はあ……」
 黒田の携帯で0024に電話すると、隆の耳に若い女性の声が聞こえてきた。
「玉江さんですね。私は何でも知っています。娘さんの里美ちゃんは北の雨の宮殿にいるはずです。でも、その前に力を得ないと……」
 隆は血相変えて、車の進路を北に取った。
「ちょっと、隆さん! 僕の友人が西にいますよ!」
「北の雨の宮殿に行かないと! 娘がいるんだ!!」
 電話の受話器から「ちょっとー!! その前に力を得ないとって、言っているでしょうー!!」
との大声が木霊した。
「玉江さん! 24時間のお姉さんも言っているでしょう! まだ、北に行ってはいけないようですよ! 僕の友人のところへ行きましょうよ! 何のことかは解りませんが!」
 二人の説得で隆は渋々に納得せざるを得なかった。
「力を得るって!! どういうことですか?!」
 電話越しに隆が叫ぶと、
「雨の宮殿にはこの天の園で、一番尊い生命の神がいます。そして、その神はここ100年ですが、様子がおかしいのです……。下界にたくさんの干渉をしたり、天の園でも不正な干渉をしているのです。何かあるとあたしは思います。ですから……あなたは力をこの天の園で得るのです。ご覧の通りにみんな遊び人ですから、難しいですね……。でも、きっと、力になってくれる人がいます。この天の園でも真面目な兵士がきっといて、力になってくれるでしょう」
 電話の24時間のお姉さんは続けた。
「西の方のあなたの本当の両親と両親は真面目な方ですが、後で雨の宮殿に囚われるでしょう。そうなる前に会って、話してみてください。あなたの両親は虹とオレンジと日差しの町にいます。何かがあります。あ、それと、天界の食べ物は決して食べてはいけませんよ」
「囚われる? 俺の両親と本当の親が?」
「ええ。私には解るのです」
 隆は電話の主の24時間のお姉さんの言葉に仕方なく頷くしかなかった。娘に早く会いたいが、この世界のことを何も知らないし、話を聞いておいて損はまったくないだろう。
「解りました。西に行って両親に会います」
 隆は電話をしながら西へとまた車を走らせた。
「頑張って下さい。後、時々私に電話をして下さい。きっと、役に立ちますよ」
 24時間のお姉さんの電話を切った。
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