第37話

文字数 1,315文字

 20分くらいバス停で待っていると、オレンジ色のバスがやってきた。その中に少し赤くなった顔をした父親の隆太がいた。
 どうやら、居酒屋にいたら江梨香の電話に捕まったらしい。
「おお、隆か。久しぶり。お前もとうとう死んだのか?」
 のらりくらりとした言動のオレンジ色の背広姿がバスから降りて来た。生前と変わらず、メタボリックシンドロームを体で表していて、髪はかちんこちんにポマードで固めている。少しだけ酒が回っているようだ。いかつい顔は今は夕日で赤味のあるオレンジ色だ。
「あ、父さん。実は……俺は死んだわけじゃないんだ。これから、ちょっと道具を取りに行くから……。家で待っててくれ。訳はその時話すから……すぐ戻ってくるよ」
 少々、赤ら顔の隆太が首を傾げたが。あ、そうかと適当に納得し大きく頷くと、玉江宅へと帰って行った。
 隆は外壁行きバスへと乗り、外壁の大通りの近くに着いた。
 そこから、しばらく歩く。
 歩いていると、ペットショップでジョシュァがオレンジ色の猫に頬を擦り寄せていた。この町もどこも平和なのだな。
 隆がそう思っていると、急に空が薄暗くなりだし土砂降りの雨が降ってきた。

 薄暗い天空から黒い巨大な雲のような塊が突如現れた。
嘶く黒い馬に乗った黒い翼の生えた鎧武者。ゆうに4万をも超える大軍が、虹とオレンジと陽射しの町を静かに見据えていた。
 鎧武者の大軍は天空から町に向かって、いきなり一斉に弓矢を構えた。豪雨のような火の矢が町へ降り出した。町の住人たちは何が起きたのかと天を見た。どしゃ降りの雨と同じく天から降ってきた数万の火の矢が降りかかり、住民たちに突き刺さり、バタバタと倒れだした。 豪雨のような矢が突き刺さった自動車やバスは火を吹き、道路はすぐに壊滅状態となった。
 悲鳴や子供の泣き声がする。
 所々から破壊の音がした。
町の至る所にいるオレンジ色の警官たちは、混乱をしていたが天に向かってすぐさま拳銃を抜いて発砲していた。 
オレンジ色の警官や住民たちには矢に貫かれて倒れた怪我人が溢れるくらいに現れた。大勢の鎧武者の厚い鎧は弾丸を弾き、この町の全ての少数の警官が火の矢によって倒れると、町の人々に何らかの危害を加えようと黒い乱入者である大軍は一斉にこの町へと降り立った。オレンジ色の町は黒い鎧武者の出現で、恐怖の町となった。
ここ天の園では死ぬことはないが、怪我や重症があった。火の矢によって、ビルや宿泊施設や住宅街が燃え盛る。
 地に降りてきた鎧武者の大軍は、逃げ惑う者を刀や槍で斬っては貫いて、倒れた者と倒れていた者を肩に巻いた荒縄でグルグル巻きにしては、無慈悲に天へと引きずって行った。
 白い翼が生えた鎧武者の大軍によって、日差しの塔は早くも煙が立ち昇り、隆の周辺の建物からも悲鳴や叫びや、至る所でガラスを破壊する音が容赦なく鳴り響いた。
 大声を張り上げて、鎧武者の大軍は建物の中へと隠れた町の住人を捕えるために黒い馬で町中を駆け巡り扉やドアを破壊していった。
 隆は何が起きたのかさっぱり解からなかった。
 一瞬にして、訳の解らない恐怖が溢れ出した町。
 ただ、大通りの電信柱の近くで呆然と町を眺めて震えているだけであった。
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