第1話 お兄ちゃんは妹の通う学校へ進学しました

文字数 1,220文字

 昨日の入学式と同様に、見事なまでに桜が咲き乱れる春の朝。

 新しい制服に袖を通した僕は、可愛い妹と並んで同じ通学路を歩いている。
ふっふふーん
どうしたの、凛花? やけにご機嫌だね
うん。だって凛花、こうしてお兄ちゃんと同じ学校に通う事になるなんて、想像もしてなかったんだもん
いや、それは凛花が制服が可愛いからーって理由で、私立の中学に進学しちゃったからだよ
うん。でも、本当に可愛いでしょ? ね、お兄ちゃん

 そう言うと、凛花が両手を大きく広げ、僕の前で楽しそうにクルクルと回り出す。

 妹の、いや僕たち兄妹が通う私立聖星光学園は、女子の制服がワンピースタイプの制服で、全国でも珍しいらしい。

 その上、紺色のワンピースは清楚でデザインも良く、可愛い凛花が着ると尚更可愛くなる。個人的には夏服の白いワンピースの方がより好みだけど……じゃない、小柄な凛花が更に可愛くなってしまうので、兄としては心配だが。
 それにしても、しっかり膝下まで丈があるので、クルクル回っても紺色の靴下までしか露わにならなくて安心だな……と思っていると、凛花が突然ピタッと回転を止める。
でも、どうしてだろー?
えっ!? お、お兄ちゃんは凛花が変質者に襲われたりないかを心配して見ていただけであって、もしかしたら太ももやパンツが見えるかも! 何て事は考えてないよっ!?
えっ!? 何の話? 凛花が言っているのは、突然高等部が共学になった話だよ?
あ、あぁ。それね……詳しい事は分からないけど、少子化問題とかいろいろあるんじゃないかな? まぁでも、そのおかげでお兄ちゃんは凛花と同じ学校に通えるんだけどね

 今でも鮮明に思いだせるけど、あれは凛花が中学に進学する直前の事だ。

 僕も中学二年になり、凛花も中学一年となって、また二人で毎日通学出来ると喜んでいた所に、まさかの私立中学、それも女子校に進学すると凛花に告げられた。

 あれから約二年が経ち、進学先を決めなければならない時に、凛花の通う学校の高等部が共学化したと聞いた時は、それこそ天にも昇る気持ちだったんだ。

 もちろん毎日家で会えるけど、一緒に通学するって言うのは、何だかその、兄妹を越えて恋人みたい……げふんげふん。
 とにかく今はこうして、ようやく三年振りに凛花と一緒に登校している。大きくて丸い瞳に、淡いピンク色の唇、長くサラサラとした髪の毛に、ちょっと小柄な身体も全部僕の……ではなくて、僕が護るんだっ!
あ、お兄ちゃん。学校着いたよー。じゃあ、凛花はこっちだから
おっと、じゃあまた家でね
うんっ。お兄ちゃん、高校生頑張ってね! それから……その制服姿、格好良いよ

 思い出に耽っていると、いつの間にか校門に辿りついていて、凛花が笑顔で応援してくれた上に、格好良いとまで言ってくれた。

 くぅぅぅーっ! 可愛いっ! よし、これで今日も一日頑張れる! 凛花の無邪気な笑顔と鈴の音の様な声を心に刻み込み、僕は高等部の校舎へと向かったのだった。
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登場人物紹介

三木 健斗(みき けんと)<主人公>

15歳の高校1年生。

家から一番近い中高一貫の私立高校が女子校から共学になったので、進学した。

普通の中学校からミッションスクールと呼ばれるキリスト教の学校へ進学したので少し戸惑いはあるものの、ある想いを胸に秘めて通学する。

三木 凛花(みき りんか)<主人公の妹>

14歳の中学3年生。

家から一番近い事と、制服が可愛いという理由で中学からミッションスクールに通う小柄な少女。

無邪気過ぎる言動と笑顔で、たびたび兄を困らせている。

鈴木 裕也(すずき ゆうや)<主人公のクラスメート>

15歳の高校1年生。

可愛い女の子が多そうだからという理由だけで、ミッションスクールへ進学してしまった、黒タイツが好きな少年。

思った事を口に出来る、ある意味で勇者。高等部だけでなく中等部の女子生徒にも興味を持っている。

小崎 愛(こさき あい)<主人公の幼馴染み>

15歳の高校1年生。

両親がクリスチャンで、小学校までは公立の共学校に通っていたが、中学からミッションスクールへ。

小学生の頃は女子と遊ぶよりも、男子と一緒に木登りやサッカーをしていた活発な少女。

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