第6話 教会の中

文字数 1,332文字

 教会の扉の先には再び大きな扉があり、その先へ進むともの凄く広い――奥行きがあり、天井の高い部屋が現れた。
 真ん中の通路を境目に、八人くらい座れそうな長い椅子が左右に置かれ、それがずっと奥まで続いている。もしかして、二百人くらいは優に座れるのでは無いだろうか。
 左右の壁には大きなステンドグラスがあり、青や黄色のガラスが不思議な模様を描いている。
 そして部屋の一番奥にはまた誰かの像が置かれており、その壁には十字架にかけられたイエス像が掛けられていた。
 昨日の入学式は普通に体育館だったけど、ここは如何にも特別な場所という感じがする。
す、凄いね。何だか神聖な場所って感じがするよ
ふふっ。でしょ? 日曜日には、ここでミサが開かれていたりもするんやから
ミサって言うと、教会に行ってお祈りして、何か偉い人の話を聞く会だよね?
まぁ極端に言うとそうやけど……最後の晩餐って知ってる?
えっと、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた大きな絵だよね?
 確か、イタリアの修道院の壁に描かれたんだっけ? モナ・リザと並ぶ、凄い絵画だとか何とか。
そうそう。その絵の元となる聖書に書かれていた話で、イエス様が弟子にパンと葡萄酒を与えたんやけど、ミサでは聖体拝領って言って、パンを食べるねん
ふーん。何か、儀式みたいなものかな?
まぁそんな感じかな。聖体拝領は誰でもって訳にはいかへんねんけど、ミサへの参加は誰でも出来るから、興味があったら覗いてみたらええと思うよ?
 そう言えば、凛花が日曜日にいつも学校でイベントやってるって言ってたっけ。と言っても、凛花が参加してた様子は無いけど。
あ、そうや。さっき言ってた聖堂やけど、今ウチらが居る、教会の中で中心となる儀式を行う場所の事を言うねん。で、カトリックはそうやねんけど、プロテスタントでは聖堂って言うんじゃなくて、礼拝堂って言葉を使うねん
へー。同じキリスト教でも、カトリックとプロテスタントで色々と違うんだね
まぁねー。大昔の人が、カトリック教会に反して新たに起こしたのがプロテスタントやから。で、そこから更にいろんな派閥も出来たりしてなー。イエス様を崇めるっていう点で、根本は同じやねんけどね
 僕の右隣へ座った愛ちゃんから色々教えて貰っていると、一番奥にある少し段のある所へ、いかにも神父ですという服装の男性が立つ。
 流石に愛ちゃんも口を閉じ、神父さんの話に耳を傾けているので、僕もそれに倣うことにする。
……
 うん。とりあえず、あんまり難しく考えなくて良いよ……と言っているんだろうなと解釈した。これが正しいかどうかはわからないけど。
 あれ? そう言えば、ずっと愛ちゃんと話し込んでしまっていたけれど、鈴木君は大丈夫だろうか? ここに着席してから随分静か……というか、静かすぎるけど。
 僕の左側へ座る鈴木君に視線を移してみると、
……くぅ
 寝てるーっ!
……鈴木君。もう、お話が終わったよ? みんな教室に戻る雰囲気だよ?
……ん? 黒タイツ女子が五人揃ったのか?
どんな夢を見てたのっ!? それより、寝ぼけてないで早く起きてよっ!
 僕は小声で鈴木君に声を掛けながら体を揺すり、何とか榊原先生に見つかる前に、起こす事が出来たのだった。
 ……見つかってないよね?
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登場人物紹介

三木 健斗(みき けんと)<主人公>

15歳の高校1年生。

家から一番近い中高一貫の私立高校が女子校から共学になったので、進学した。

普通の中学校からミッションスクールと呼ばれるキリスト教の学校へ進学したので少し戸惑いはあるものの、ある想いを胸に秘めて通学する。

三木 凛花(みき りんか)<主人公の妹>

14歳の中学3年生。

家から一番近い事と、制服が可愛いという理由で中学からミッションスクールに通う小柄な少女。

無邪気過ぎる言動と笑顔で、たびたび兄を困らせている。

鈴木 裕也(すずき ゆうや)<主人公のクラスメート>

15歳の高校1年生。

可愛い女の子が多そうだからという理由だけで、ミッションスクールへ進学してしまった、黒タイツが好きな少年。

思った事を口に出来る、ある意味で勇者。高等部だけでなく中等部の女子生徒にも興味を持っている。

小崎 愛(こさき あい)<主人公の幼馴染み>

15歳の高校1年生。

両親がクリスチャンで、小学校までは公立の共学校に通っていたが、中学からミッションスクールへ。

小学生の頃は女子と遊ぶよりも、男子と一緒に木登りやサッカーをしていた活発な少女。

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