第4話 黒タイツ

文字数 1,649文字

えーっと、とりあえず纏めると、シンプルな作りの教会はプロテスたんで、ゴージャスな感じの教会がカトリって事だな?
プロテスタントとカトリックね。あと、ついでに言っておくと、東方正教会を加えて、三大宗派って言うのよ
東方正教会?
 愛ちゃんの言葉に鈴木君が怪訝な顔をする。
 まぁそれについては僕も同じだけど。流石にプロテスタントとカトリックって言葉は知っていたけど、東方正教会って言うのは知らなかったよ。
 東方って言うくらいだから、日本とかアジアに多いのかな?
東方正教会は東ヨーロッパとかロシアに多く……って、これはまぁいっか。そのうち授業でやるやろーし
えぇっ!? 授業でそんな話をするのかっ!?
当たり前やん! ……あのさ。アンタ、キリスト教の勉強をするために、この学校へ来たんやんな?
キリスト教? いや、違うけど?
はぁっ!? じゃあ、一体何でこの学校へ来たん?
そんなの決まってるだろ。可愛い女の子が多そうだからだっ!
 うわぁ。断言しちゃったよ。いやでも、ここまでハッキリ言えたら、むしろ清々しいかもしれない。
 僕も進学した動機が、キリスト教を学びたかった訳ではないから……いや、やっぱり無理だ。僕は鈴木君みたいにカミングアウト出来ないや。
いや、ある意味尊敬するわ。アンタ、女の子にモテる風には全く見えへんけど、実はモテモテやってんね
え? 全然だけど?
へっ? でも、ウチみたいに可愛い女の子が多いから来たって言わんかった?
うむ。小崎ちゃんが可愛いかどうかは置いといて、可愛い女の子とお近づきになるために来たぜ? 何と言っても、恋人居ない歴と年齢がイコールだからな
まぁそれはウチも人の事を言えないけど……って、ちょっとー! それより、どうしてウチが可愛いかどうかって話を置いとくん!?
はっはっは。よし、じゃあ健斗に聞いてみようぜ。小崎ちゃんが可愛いかどうかを
 ……ええっ!? そこで僕に振るの!?
 おそるおそる愛ちゃんを見てみると、さっきまで普通に喋ってたのに、急に押し黙って僕の事を上目遣いで睨んでいる。
 自分でもどうしてかは分からないけれど、小学生の時に、鬼ごっこをすればいつも愛ちゃんが僕ばかりを追いかけ、サッカーをすれば僕にだけ激しくぶつかって来た事を思い出してしまった。
け、健ちゃんはウチの事、どう思うん?
か、可愛いと、お、思う……よ?
そうやんなーっ! ウチ、可愛くなったやんな!? 女の子らしくなるように、頑張ったもん
 僕の答えで、愛ちゃんが笑顔を浮かべて跳びはねている。
 良かった。どうやら答えを間違えなかったみたいだ。
……健斗の声が震えてたんだが……
あら? 何か言ったかしら? 鈴木君
怖ぇよっ! その笑みが逆に恐怖を呼び起こすわっ! ……そうだな。とりあえず、黒タイツを履くんだ。それだけで可愛く見えるから
へぇー。面白い事を言うのね。うふふ……
 うんうん。鈴木君と愛ちゃんはすっかり打ち解けたみたいで、互いに見つめ合いながら言葉を交わしている。
 けど、どうしてだろう。見つめ合う二人を見ていると、一触即発という言葉が浮かんでくるのは。
もう、鈴木君に小崎さん。これから教会へ入るのだから、静かにしなさい
あっ! す、すみません
……
 いつの間に着替えたのか、修道服姿の榊原先生が来て、二人とも怒られてしまった。
 だけど、すぐに謝った愛ちゃんに対し、鈴木君は無言のまま。どうしたんだろう? 先生も呆れた様子のまま、教会へ向かって行っちゃったし。
ちょ、ちょっと鈴木君。ちゃんと謝っておいた方が良いよ
……健斗。なんてこった。俺は今まで大変な事を見落としていたよ
な、何が?
シスターと黒タイツ。この組み合わせが、こんなに可愛いだなんてっ! 俺、行ってくるっ!
えぇっ!? ちょっと待って! 行くってどこへ!?
 僕の制止も聞かず、鈴木君が先生を追いかけて行き、
あのっ! シスターって……シスターって、やっぱり処女なんですかっ!?
……
――っ!? ぐへっ!
 パシィッと大きな音を響かせ、思いっきりビンタされたのだった。
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登場人物紹介

三木 健斗(みき けんと)<主人公>

15歳の高校1年生。

家から一番近い中高一貫の私立高校が女子校から共学になったので、進学した。

普通の中学校からミッションスクールと呼ばれるキリスト教の学校へ進学したので少し戸惑いはあるものの、ある想いを胸に秘めて通学する。

三木 凛花(みき りんか)<主人公の妹>

14歳の中学3年生。

家から一番近い事と、制服が可愛いという理由で中学からミッションスクールに通う小柄な少女。

無邪気過ぎる言動と笑顔で、たびたび兄を困らせている。

鈴木 裕也(すずき ゆうや)<主人公のクラスメート>

15歳の高校1年生。

可愛い女の子が多そうだからという理由だけで、ミッションスクールへ進学してしまった、黒タイツが好きな少年。

思った事を口に出来る、ある意味で勇者。高等部だけでなく中等部の女子生徒にも興味を持っている。

小崎 愛(こさき あい)<主人公の幼馴染み>

15歳の高校1年生。

両親がクリスチャンで、小学校までは公立の共学校に通っていたが、中学からミッションスクールへ。

小学生の頃は女子と遊ぶよりも、男子と一緒に木登りやサッカーをしていた活発な少女。

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