第4話 黒タイツ
文字数 1,649文字
愛ちゃんの言葉に鈴木君が怪訝な顔をする。
まぁそれについては僕も同じだけど。流石にプロテスタントとカトリックって言葉は知っていたけど、東方正教会って言うのは知らなかったよ。
東方って言うくらいだから、日本とかアジアに多いのかな?
うわぁ。断言しちゃったよ。いやでも、ここまでハッキリ言えたら、むしろ清々しいかもしれない。
僕も進学した動機が、キリスト教を学びたかった訳ではないから……いや、やっぱり無理だ。僕は鈴木君みたいにカミングアウト出来ないや。
……ええっ!? そこで僕に振るの!?
おそるおそる愛ちゃんを見てみると、さっきまで普通に喋ってたのに、急に押し黙って僕の事を上目遣いで睨んでいる。
自分でもどうしてかは分からないけれど、小学生の時に、鬼ごっこをすればいつも愛ちゃんが僕ばかりを追いかけ、サッカーをすれば僕にだけ激しくぶつかって来た事を思い出してしまった。
僕の答えで、愛ちゃんが笑顔を浮かべて跳びはねている。
良かった。どうやら答えを間違えなかったみたいだ。
うんうん。鈴木君と愛ちゃんはすっかり打ち解けたみたいで、互いに見つめ合いながら言葉を交わしている。
けど、どうしてだろう。見つめ合う二人を見ていると、一触即発という言葉が浮かんでくるのは。
いつの間に着替えたのか、修道服姿の榊原先生が来て、二人とも怒られてしまった。
だけど、すぐに謝った愛ちゃんに対し、鈴木君は無言のまま。どうしたんだろう? 先生も呆れた様子のまま、教会へ向かって行っちゃったし。
僕の制止も聞かず、鈴木君が先生を追いかけて行き、
パシィッと大きな音を響かせ、思いっきりビンタされたのだった。