第3話 少女消滅

文字数 802文字

今日は日曜だから、また肝試しに誰か来るかもね。という話をダラダラとしながら、何もできない1日は過ぎる。
話の流れで、アミの過去の恋愛の話を聞いたら、濁された。
そのくせ、俺の恋愛についてはしつこく聞いてきた。
「初めての彼女はいくつの時?」
「小6ぐらい?卒業で有耶無耶になった感じだと思う。」
「切ないねえ。どんな娘だった?」
「髪が長かった。」
「それだけ?」
「印象あまり覚えてないんだよ。」
「ひっどい。」
途中、アイツが禍々しい気配を放って背後を通り過ぎたが、特に害はなかったから無視した。
「構ってあげた方がいいのかな。」
「いらんでしょ。」

無為に過ごしていても、生きてた時と同じ速度で時間は進む。
夜が更けて、窓の灯りも消え、港の光だけが最後まで残っている。
俺は大きな欠伸をした。眠気というものは今でもたまに訪れる。
「眠いの?」
「たまに眠くなるよね」
「膝枕、してあげようか。」
悪戯っぽくアミが膝をとんとんと叩きながら言う。何を言ってるのだろうと思ったが、細くて白い太腿を見て、
「お願いいたします。」
と言って身を委ねた。
肉体が無くても、欲望の残滓はある。
そういえば、射精はできるんだろうか、などと余計なことを考える。
アミは、俺のピアスや耳の軟骨を弄っている。
何となく気持ちよくて、そのまま意識を飛ばした。

海猫の声が騒々しい。遠くで学校のチャイムが鳴る。廃墟の壁の隙間から、海に反射する太陽光線が眩しい。
夜はとうに終わっていた。俺は起き上がって欠伸をする。
アミが鬱陶しく思ったのか、床に寝かされている。
「アミ、爆睡してごめん。」
隣にもいなかった。
ふと、違う感覚があり耳を触ると、お気に入りの一番大きいピアスが消えている。
「あれ、取った?」
別にあげていいんだけど。言ってくれればいいのに。
「アミ!」
返事はない。廃墟の各部屋を見たが、アミもアイツもいなかった。
「アミ、どっか行った?」
夜が更けて呼び掛けても、返事はなかった。

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