第4話 少女降臨
文字数 584文字
「待っても無駄だよ。」
鈴を転がすような、見るもの全てを見下す声が鳴る。
ぼんやりと寝転んでいた。このまま、黒い霧になって、廃墟の一部に溶けていくような夏の昼下がり。
「何が。」
「あの子は待っても無駄。」
見ると、真夏に長袖の、深紅のワンピースのボタンを首元まで止めた女の影があった。
「ああ、そう。」
俺はそれ以上そちらを水に、差すような光を浮かべる波間を眺めた。
女の影は動かない。
「あの子は、」
「どちら様だよ。」
女が俺の顔を覗き込んだ。透けるような白に、泣き黒子が目立つ、ネコ科みたいな幼い顔。
「お前は、何も知らない。」
俺は五月蝿いな、という視線を向けたが、女は表情を変えずに俺を見ている。
「五月女アミは、帰ってこない。戦って消えたから。」
「佐伯少年も、五月女アミに巻き込まれて消えた。まあ、あの感じじゃ、何の戦力にもならなかっただろうけど。」
淡々と、桃色の唇は動く。
「アミが消えた今、お前だけ、戦わないで済む筈がない。」
「頭おかしいの?」
こいつも、生きてる人間じゃないのはわかった。
佐伯は、誰だ。そして、五月女という名字は、今更知った。
頭のおかしい女は飽きもせず傍に佇んでいる。
意味もなく、シケモクを咥えた。何を言ってるのかわからないが、もうアミは帰ってこないのだろう。
「ねえ、アミは何と戦ったの?」
「また来る。その時に教える。」
少女は問いには答えずに海の方へ歩いて行った。
鈴を転がすような、見るもの全てを見下す声が鳴る。
ぼんやりと寝転んでいた。このまま、黒い霧になって、廃墟の一部に溶けていくような夏の昼下がり。
「何が。」
「あの子は待っても無駄。」
見ると、真夏に長袖の、深紅のワンピースのボタンを首元まで止めた女の影があった。
「ああ、そう。」
俺はそれ以上そちらを水に、差すような光を浮かべる波間を眺めた。
女の影は動かない。
「あの子は、」
「どちら様だよ。」
女が俺の顔を覗き込んだ。透けるような白に、泣き黒子が目立つ、ネコ科みたいな幼い顔。
「お前は、何も知らない。」
俺は五月蝿いな、という視線を向けたが、女は表情を変えずに俺を見ている。
「五月女アミは、帰ってこない。戦って消えたから。」
「佐伯少年も、五月女アミに巻き込まれて消えた。まあ、あの感じじゃ、何の戦力にもならなかっただろうけど。」
淡々と、桃色の唇は動く。
「アミが消えた今、お前だけ、戦わないで済む筈がない。」
「頭おかしいの?」
こいつも、生きてる人間じゃないのはわかった。
佐伯は、誰だ。そして、五月女という名字は、今更知った。
頭のおかしい女は飽きもせず傍に佇んでいる。
意味もなく、シケモクを咥えた。何を言ってるのかわからないが、もうアミは帰ってこないのだろう。
「ねえ、アミは何と戦ったの?」
「また来る。その時に教える。」
少女は問いには答えずに海の方へ歩いて行った。