第3話

文字数 685文字

たかひろが堀木を愛していることに気がついたのは、半年前のことだった。

10年以上の長い付き合いの友であった彼らは、以前からよくお互いの部屋を行き来していた。

年上の堀木のことは、何でも相談できて、悪ふざけもできる兄のように思っており、自分のわがままや、タチの悪い冗談も笑って受け流してくれる豪快なところが好きだった。

ある日の晩、たかひろが堀木を部屋に誘い、一緒に飲んでいると、酔った堀木がリビングのカーペットの上でそのまま寝てしまったことがあった。

たかひろは、仕事で疲れてるんだなあ、と思いながら堀木に毛布を掛け、自分もうつ伏せになって頬杖をつきながら彼の寝顔を見つめていた。

むっちりとした手足を投げ出し、太り気味のぽっこりとしたお腹は深い寝息に合わせて規則正しく膨らんだり、縮んだりを繰り返している。

たかひろは、堀木の無防備で安心しきった姿を見て、子供みたいで可愛らしいと思った。

寝顔をずっと見ているうちに、彼にキスしたい、もしかして、キスしたら目を覚ましてしまうだろうか、という思いがふっと頭の中をよぎった。

たかひろは奥の寝室で眠っている恋人の様子をこっそり伺うと、堀木の懐に潜り込んで自分の唇を彼の唇に恐る恐る重ね合わせた。

堀木は何も知らないまま、静かに寝息を立て続けている。

たかひろは生まれて初めてのキスを経験した少年のように心臓を高鳴らせていた。

彼女も、そして堀木自身も知らない自分だけの秘密。

この胸の高まりも、彼にもっと触れていたいという気持ちも、自分の心の中に秘めておきたい。

そう思いながら、堀木の懐で温もりを感じながら眠るたかひろは幸せなひとときを過ごした。

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