第5話

文字数 1,989文字

「こんな夜遅くに相談って何?俺、もう寝るところなんだけど」

玄関のドアを開けた堀木は、仕事の疲れと、彼が唯一ゆっくりできる時間を妨げられて、少し機嫌が悪かった。

もうすでにパジャマに着替え、コンタクトを外して眼鏡をかけている。

たかひろは、堀木のパジャマの襟元から見え隠れする白くてもっちりとした胸元を見て、今まで抑えていたものが




ぷつん




と途切れるのを感じた。

気がつけば、堀木のパジャマを強引に引き剥がしていた。

前で止めていたボタンが弾け飛び、堀木の胸があらわになる。

「お前なあ、何すんだよ、いきなり…」

堀木はたかひろを軽く睨みつけた。

たかひろは己の欲望の赴くまま、堀木の胸にしがみついて彼に囁いた。

「ねえ……堀木さん…おいらの身体、熱くてどうにかなってしまいそうなんです…。
ほら…触ってくださいよ…」

彼は堀木の手を取ると、その手を恐る恐る、下半身に導いた。

堀木は内心イラ立ちながらも、たかひろの為すがまま、ジャージ越しに彼に触れた。

「なんだ、お前、ガチガチに勃ってんじゃん。溜まってんの?」

堀木はたかひろの下半身をサワサワと軽く撫でながら言った。

「ああ、堀木さん…もっと…もっと触って…」

たかひろは顔を真っ赤にしながら堀木に懇願した。

―もしかして、彼女とうまくいってないのだろうか。

たかひろのただならぬ様子に、堀木の頭の中で一つの疑念がちらりとよぎった。

「あのなあ、お前、彼女と同棲してただろ?あの娘はそういうことしてくれない訳?」

「そんなことないです、ただ、彼女がもう寝てしまったので頼みづらいなって…」

「ふうん、まあいいけど、お前もヘンな奴だな。普通、そういう時は自分で抜くだろ」

堀木は呆れたように笑って言った。

「いいから、何も言わないで…もっとおいらに触ってください」

「しょうがねぇなぁ、全く…そんなに言うなら上がって寝室入れよ。玄関でやるのおかしいだろ」

たかひろは堀木に導かれ彼の寝室に入った。

ベッドの上で初めて男を知る生娘のように恥じらいながら、堀木のはだけたパジャマと、白い肌をしげしげと見つめていた。

ああ…とんでもないことになってしまったな…。

たかひろは自分から誘っておきながら、これから起きること、堀木にされるであろうことに緊張感と恥じらいを覚え、この場から逃げ出したいような気持ちに駆られた。

「おい、たかひろ」

堀木は上のパジャマを脱ぎ捨てながら声をかけた。

「お前、ぼさっとしてないで脱ぐならサッサと脱げよ」

「えっ…。脱がしてくれないんですか…?」

「何わけのわかんねえこと言ってんだ、処女の初体験じゃあるまいし」

堀木はそう言って鼻で笑うと、たかひろのジャージのズボンに手をかけて一気に膝まで下ろした。

彼の大きく、硬く膨張した恥部が露わになった。

たかひろは恥ずかしさのあまり顔を手で覆い隠した。

堀木はたかひろの態度に違和感を覚え、少し薄気味悪いと感じていた。

男が男にせがむ気持ちも、恥じらう気持ちも、俺には理解できない。




…でも、一度言ったからにはやり遂げなければならない。



堀木はベッドの下に転がっていた使いかけのローションのボトルを拾い上げ、中身を手に取ると、黙ってたかひろのペニスに塗りたくり始めた。

「ああ…堀木さん…気持ちいい…もう出ちゃいそうだ、出してもいいですか?」

「出したいならサッサと出せば?シーツ汚すなよ」

堀木は彼のペニスをしごきながら言った。

手を動かす度、ぎち、ぎち、と卑猥な音が部屋中に広がっていく。

そして響き渡るたかひろの喘ぎ声。

堀木は機械的に手を動かしながら、快楽に震えるたかひろを眺めていた。

まったく、何が楽しくてこんな夜遅くに男の相手をしてやらねばならないのか。

どうせなら、カワイイ女の子が訪ねてくればよかったのに。

堀木がそう思った矢先、たかひろは腰を震わせながら射精した。

「うわあ…すごい量だな…。
まあ、こんだけ出せば少しはスッキリしただろ、シャワー浴びてこいよ」

堀木はたかひろにバスタオルを投げつけた。

たかひろは顔を手で覆い隠したまま、肩で息をしている。

「ねえ……。堀木さん……」

たかひろは苦しげに息をしながら囁いた。

「何?なんか言ったか?」

堀木がたかひろの声を聞き取ろうと顔を近づけると、たかひろは急に身体を起こし、キスをしようと首にしがみついてきた。

たかひろの唇が堀木に触れた。

「お前さあ、いい加減にしろよ!」

舌をねじ込まれかけたところで、堀木はたかひろの身体を強引に引き剥がした。

「悪いけど、俺はそういう趣味ないから勘弁しろよ。
お前がしつこいから抜くの手伝ってやっただけ、冗談もほどほどにしろ」

堀木はぴしゃりとこう言うと、たかひろに背を向けて横になった。

「ごめんなさい、悪ふざけしすぎました…」

たかひろは震える声でぽつりと呟くと、静かに寝室を出た。

あの日の淡い思い出は脆くも崩れ去り、彼は自分の愚かな行為に人知れず涙を流したのだった。

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