第26話 マルチリンガルが仕掛ける楽しい多言語ドッキリ【愛知県】

文字数 3,534文字

Kazu Languages(カズ・ランゲージズ、2000-)

 YouTube動画内では自身のことを「名古屋」在住で、名前は「Kazuma(カズマ)」と称しています。Kazu Languagesは、著者名として使用しているようです。
 筆者は、いつのまにかYouTubeチャンネル「Kazu Languages」のヘビー視聴者になっていて、気が付くと、(一杯やりながら)ほとんどエンドレス状態で次から次へと一晩中動画を再生し、楽しんでいることがあります。
 「言語に興味があるの?」と聞かれれば「いいえ」という答えるしかありません。事実、動画内で交わされる会話のうち、英語の部分はほんの少しだけ理解できますが、さまざまな国の母国語が素人に分かるわけはありません。
 「それではなぜ視聴するの?」と聞かれれば、答えは簡単です。「ドッキリが面白いから」です。
 「外国人に突然母国語で話しかけられると、そんなに嬉しいの?」というくらい、ドッキリを仕掛けられた相手が驚き、そして喜ぶリアクションが見たいからです。
 本稿執筆時点(2024年9月)で、YouTubeのチャンネル登録者数106万人、その他、TikTok、Instagram、Facebookを含めた総フォロワー数が200万人ともいわれる話題のポリグロット(多言語話者)を今回取り上げます。

いかにしてKazuは12ヵ国語を習得したのか?

 2024年5月に発行されたKazuの初の著書のタイトルは、『ゼロから12ヵ国語マスターした私の最強の外国語習得法』となっています。
 YouTube動画内では、もっとずっと多くの言語でネイティブ・スピーカーと会話しているKazuなので、「12ヵ国語」という控えめな数は、それだけ自信のある言語なのでしょう。
 その言語とは、スペイン語、英語、フランス語、アラビア語、インドネシア語、ロシア語、ポルトガル語、ドイツ語、トルコ語、中国語、タイ語、韓国語です。
 これらの言語についてKazuは、「ネイティブの人たちとおしゃべりする」、「ブログやSNSなどのライトな文章を読む、書く」くらいなら、すべての言語で不自由なくできると述べています。
 そして、これら言語の習得ですが、最初に取り組んだスペイン語だけは、現地へ留学して学んでいますが、残り11ヵ国語は驚いたことに全部独学なのです。

その言語をどれくらいの人が話すのか(話者数)を重視

 興味深いのは、新しい言語に取り組む際、Kazuが重要な判断指標としているのが「話者数」すなわちその言語を話す人々の数である点です。
 その数は、スペイン語が約5億人、フランス語約2億人、アラビア語約3億人、インドネシア語約2億人、ドイツ語約1億3000万人なのだそうです。
 一つの言語を習得するたびに、これだけの数、コミュニケーションをとれる人口が増えるわけですから、確かにモチベーションアップには最適な指標といえます。

学習者が皆引用するネルソン・マンデラの名言

 さて、同著の序盤に、アパルトヘイト撤廃に尽力した元南アフリカ大統領Nelson Mandela(ネルソン・マンデラ、1918-2013)の言葉が引用されていました。



 素晴らしい名言だなあと思い、いろいろ検索してみましたが、言語学習に関わる人たちでこの名言に触れている例は非常に多いにもかかわらず、出典については誰も示していませんでした。
 そこで、マンデラに関する著書にも何冊か直接あたってみましたが、残念ながら今回の資料調査では、この言葉が「いつ、どこで」発せられたのかを特定することはできませんでした。
 マンデラは、27年間も獄中で過ごし、たくさんの日記やメモを残した人なので、獄中時代に書かれた言葉なのかもしれません。

「もっとすごい人!」はカウフマン

 同じ日本人として驚きの対象であるKazuですが、その彼が「おそらく世界一有名なポリグロット(多言語話者)」として尊敬するのが、20ヵ国をマスターしているというSteve Kaufmann(スティーブ・カウフマン、1945-)です。
 カウフマンはカナダ人で、外交官の経歴があり、その後、実業家となって以降も日本を何度も訪れたことのある人物です。
 興味があったので、雑誌のインタビュー記事を見つけ読んでみると、言語習得に関するカウフマンの持論は「たくさん聞き、読めばよい」=「多聴多読」ということでした。
 この雑誌の発行年である2019年時点で、彼の習得言語数は16ヵ国となっていて、おそらく16番目であろうチェコ語の学習では、最初の8ヵ月間は聞くことと読むことだけに費やし、その後徐々にスピーキングを始め、スピーキングの段階を上げていった、と自身の体験談を交えながら持論を展開しています。
 Kazuはカウフマンと、YouTubeチャンネル内で対談しており、その様子を動画でみることもできます。

動画内では最多30ヵ国の言語で会話

 KazuはYouTube動画内で、いったいいくつの言語を話しているのかを調べてみました。すると、「いきなり外国語を喋り始めて外国人をビックリさせてみた!【海外の反応まとめ】」という2022年12月30日公開、再生回数123万回の動画のサムネイルが「30Languages!」となっており、数フレーズ程度の会話を含めると何と30ヵ国の言語でネイティブとコミュニケーションをとっていました。

筆者が選ぶ「ベスト・リアクション」

 筆者が視聴したなかで、特に盛り上がりを感じた面白動画ないしナイスキャラのネイティブをいくつか選んでみようと思います。
 第3位は、2024年9月6日公開、再生回数47万回の「【海外の反応】多言語の日本人が世界中の多言語話者と遭遇したら...?! 」に登場する香港人の女性。日本語能力試験で2番目に難しいレベルの合格者とのことですが、今やSNSのちょっとしたスターともいえるKazuと遭遇し、どんどんハイテンションになるリアクションが最高です。「香港人っす」などと、ネイティブ日本人並みに話す流ちょうな日本語にも感心します。
 第2位は、日本人には決してなじみ深くはない言語なのに、Kazuから突然話しかけられ笑顔になるネイティブの動画から。2022月5月6日公開、再生回数23万回の「日本人が10言語以上を話して世界中の人を驚かせてみた!」に登場のケニア人男性。低めのテンションから、Kazuにスワヒリ語で話しかけられた途端、どんどん笑顔になるリアクションの落差にほっこりしました。
 第1位は、筆者がひそかに「marry me! シリーズ」と名付けている動画群から。2024年3月29日公開、再生回数157万回の「【まさか...】日本人が突然見知らぬ人の母語を話し出すというドッキリをしたら...?!」に登場するポーランド人女性。母国語で話かけられたネイティブが、あまりの盛り上がりで「結婚して!」と叫ぶ動画がいくつもあります。最初ちょっと心配して、「Kazuさん大丈夫かなあ」などと日本人的な受け止め方をしていたのですが、Kazuが毎回さらりと返答しているのをみて、「あぁ、外国語(英語)には自分の受けた感動を最大限伝えるための、洒落た会話表現があるんだ!」ということに気付いた次第です。

最近は、ロケ動画も始まりますます楽しみ!

 Kazuの動画は、基本的にKazuの自室と思われる部屋のなかで、パソコンチェアーに座りながら世界と会話、というスタイルがほとんどです。
 しかし最近、この基本パターンのほかに、Kazuが東京の街中で次々に外国人にドッキリを仕掛けたり、海外へも出向き、街歩きや食べ歩きをしながら様々な外国人に多言語で話しかけるという、ロケタイプの動画も新しく登場しています。
 「今度はどんなナイスキャラが登場し、どんな驚き方をするのだろう?」という楽しみを胸にしながら、今後もヘビー視聴者を続ける予定です。(第26話了)


(主な参考資料)
・YouTubeチャンネル「Kazu Languages」https://www.youtube.com/@KazuLanguages/featured
・Kazu Languages(2024)『ゼロから12ヵ国語マスターした私の最強の外国語習得法 (SB新書)』SBクリエイティブ
・スティーブ・カウフマン「[特別記事]カリスマ多言語話者が多読を薦める理由とは?」『多聴多読マガジン 2019年4月号』コスモピア
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