ぼくとにょろのたのしいせいかつ

文字数 1,298文字

「うえ、うえ、うええ~ん、うええ~ん、死んじゃう~、死んじゃうの~」
「泣いてる暇なんてないぞ、にょろ! 策敵範囲に敵影! 九時の方向! 諸元解析……ダメだ! 解析呪文が弾き返された? いや、散らされた、の、か? チッ! 敵の呪界特性はリフレクト(反射)でもアブソーブ(吸収)でもない!」
 最悪だ、最悪だ、最悪だ——
「……ディスペル(消去)だ!」

「……ねえ~、やっぱりリボンちゃんがお散歩から帰るまで待とうよ~。このままじゃ自分が居ないあいだにゲーム進めたって怒られちゃうの~」
 テレビゲームで遊んでいる最中に空気の読めない発言をかましてくる、にょろ。そんなにヤツの包丁が怖いのか。情けない、ああ、情けない。ちなみに俺も怖い。怖くて涙が出ちゃう。だって男の子だもん。
「……別にいいだろ、戻ってきたらパーティに復帰させればいいじゃねーか」
「なら、ぼくのキャラもそれまでパーティから外してよ~」
 不合理極まりない発言をかましてくる、にょろ。なぜオマエを外さなきゃならんのだ。俺を一人ぼっちにしてどうするつもり?
「却下だ。前衛のオマエがいなくなったら、後衛の俺が死ぬ」
「でもでも、このままじゃ~」
 顔面にピタリと貼りついてくる、にょろ。やめろ見えない迫り来る敵のせいで俺のキャラが死ぬ。
「あー、もう、うっとうしい……んで? このままなら、何だ?」
「このままだとリボンちゃんのキャラと取得経験値の差が開いちゃうの~」
「別にいいじゃねーか」
「やだやだ~! リボンちゃんといっしょのレベルがいいの~! リボンちゃんと仲良くおんなじレベルがいいの~!」
 ゲーム機の上をゴロゴロ転がりまわる、にょ……仏の顔も三度なのに……三度も我慢できたワタクシの忍耐も限界突破なのであります!
「……その望み、叶えてつかわす」
 にょろが使っているゲームキャラクターの管理画面を呼び出してカーソルを操作する。ポチッとな。
 プチッ。サクッ。ブッッシャァァァー。デロデロ~。ポンポロポンピーン。がお~。
「あ、あ、あ~! なんで~! なんでぼくのキャラを物言わぬゾンビ奴隷にクラスチェンジさせちゃうの~? これじゃ、これじゃ、もう二度と経験値が入らないの~!」
「そこでこいつも」
 続いてにょろ2のキャラクター管理画面も呼び出す。ポチッとな。
 プチッ。サクッ。ブッッシャァァァー。デロデロ~。ポンポロポンピーン。がおぅ。
「ひあ、ひあ、ひあ~! リボンちゃんの、リボンちゃんのキャラまで、ゾゾゾゾンビに~!」
「これでオマエらはいつまでたってもおんなじレベルだ。死んでも仲良くおんなじレベル。うむ、まさにオマエらのことだな」
「あああ~……ううう~……悪魔が、悪魔がここにいるの~……」
「はっはっは、はぁーっはっ『……悪魔のアンタこそ本物のゾンビにしてあげるわぁ』はっはっ! ……はっ?」
「あわわわわ~、リ、リボ、リボ、リボンちゃ……」
 なんということでしょう。気がついたときにはドス黒い殺意が背中へと突きつけられていたのです。えーと。
「ウソだって冗談だってハハッ笑えるだろナイスジョークなんだから止めオマ包丁おねが『グサッ』」
 ぎゃー。ポンポロポンピーン……が、がお?
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登場人物紹介

主人公「なるほど」

恭子「なるほどー」

にょろ「なるほど~」

にょろ2「なぁるほどぅ」

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