回想マラソン

文字数 388文字

20XX年大会で新種目『回想マラソン』-思い出を駆け抜ける単独レース―が注目された。

選手は用意されたベッドで眠りにつくと、自分の思い出が走馬灯となって次々と現れる。
その中を走り抜け、ゴールまで辿り着いたタイムを競うレースだ。
選手に年齢制限はないが、距離の平等を期すため20歳地点からのスタートとなり、
1年=1㎞の計20㎞がコースとして定められている。

一見、思い出風景を走るお気楽レースに捉えられがちだが、思い出は時に誘惑や同情に姿を変える。
身命を賭した部活動の熱気にそそられ、
終わったはずの大恋愛に心酔し、
幼少期に消えた友人に声をかけられる。
そんな障害に囚われない屈強な心の有無が、順位を左右するのだ。

第一回大会では、一握りの選手が健闘を見せたが、
ゴールを目前にして皆膝から崩れ落ちてしまい、完走者は現れなかった。
ゴールテープは『自分が産声をあげた瞬間』の先にたゆたっていた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み