恋愛管理局

文字数 648文字

「弓矢の腕、落ちたんじゃないのか?」
嫌味な顔をした営業部1課の同期が颯爽と飛んで行った。

デート日和のアーケード街で獲物を定めている俺は『恋愛管理局営業2課』配属の営業キューピッドだ。
友人は警備局や放送局に就職したが、弓矢の得意だった俺は当局一本で就職した。
だが、上には上がある。
その癖、この国は少子高齢化とやらで若者の数が減っているから出世レースが激しい。畜生。
それより今月もノルマ未達だったら4ヶ月連続になってしまう。
何かいい手は…

はっとした彼は、苦肉の策で営業ルールの盲点を突いた。
先ず動きの遅い老人を狙い、次いで若い女に弓を放った。
また別の方向を見ては、同性同士でも構わず的にした。

帰局すると、カンカンになった上司がさっそく問い詰めてきた。
「お前のせいで社会はめちゃくちゃだ!見ろ!あんな初老のジジイと若い女が腕組んで。
向こうじゃ男同士でハグしていやがる…うっぷ」
「お言葉ですが、そういつまでも固定概念にとらわれていてはいけません。年の差があったって、同性同士だっていいじゃありませんか。当の本人たちはその気なわけですし。」
下界をのぞき込む上司を見て、あと一押しだと悟るとさらに続けた。
「それによく見てください。ターゲットの周囲で嫌な顔をする通行人などひとりもいないじゃないですか。むしろ歓迎のムードさえうかがえます。」

こうして社会では“年の差婚”や“同性婚”はいつの間にか普及した。
そしてこの一連のムーブメントの発祥地「お台場シティ」に因んで“diversity”と呼ばれるようになった。
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