無能社員管理局

文字数 387文字

今日もヒソヒソと嫌味が聞こえる。
隣のデスクだけじゃない、別部署からも壁の向こうからもだ。

ごく普通の社員ならここらで根を上げるんだろうが、俺は違う。
俺は本局から派遣された無能社員エージェントなのだ。
ライバル会社に潜入し、ポンコツぶりを発揮する。
気づいた頃には会社の業績と評判はガタ落ちし、本局の一人勝ちという訳だ。
だが、流石はライバル会社だ。
もう部長に俺の存在が知れたらしい。

「何か用でしょうか」
「うむ。君の最近の過失ぶりは目に余るものがある。」
「はあ」
「備品の浪費。取引先への無礼。情報漏洩。列挙すれば際限ないだろう」
しめしめ、思った通りだ。
「しかし災い転じて福となす、だ。コスト削減。営業手法。情報管理体制。これらの抜本的な見直しによって我が社の業績と評判は大幅に向上した」
俺が唖然する中、部長は続けた。
「これも皆、君の無能っぷりのお陰だよ。本局に戻ったら礼を伝えてくれ」
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