畑の中の墓地

文字数 389文字

墓地は故人の魂が眠る場所であるが、畑の中の墓地では野菜たちの自我が芽生える。
今日もへそ曲がりのキュウリが仲間入りのようだ。

「有り得ねえ!どうしてこの俺が捨てられなきゃならねえんだ!」
「ほんと!ここを出たらサラダを彩ったり、
イタリアンで女性に「映えー!」って言われる未来が待ってたのに」
虫食われトマトが同調した。
「あんな太っちょナス野郎に何が出来るっていうのよ」
と続けたが、キュウリは黙ってしまった。
「そうだ、私たちの価値をわかってもらうためには食べてもらうのが一番よ!」

そういうと、トマトはキュウリの適当にちょん切られたヘタを引っ張って近くの八百屋の前に転がり込んだ。ちょうどそこに、怒号をあびせる主婦が一人。
なにやら嫌味を吐き捨てると、足元に落ちていたキュウリをこっそり裾に隠した。
道半ばで先ほどのキュウリをかじる。
「なによ、すっかすかじゃない!」

後に、瓜二つの語源となった。
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