第7話

文字数 1,055文字

 そして卒業…と同時に僕と達也はミュージシャンを目指して上京した。ちなみに下宿先は金がもったいないのと、できるだけ2人で作詞・作曲に取り組めるようにとのことで同じアパートの同じ部屋にした。これで智樹とは本当にお別れだな…ともあれ、僕らの新生活のスタートだ!!

 とは言ったものの田舎から出てきたばかりの無名のミュージシャンが売れるはずもなく、僕はたまに路上やクラブハウスでライブをやらせてもらいそれ以外はバイトや作詞・作曲に明け暮れる日々を送っていた。それでもどことなく心は充実していたし、僕と達也の仲も良好だった―あの事件が起こるまでは。

 事件というのは上京してから半年後のこと、達也が1つの新曲を作ったことから始まる。その曲は今風のキャチーなフレーズと軽快な音楽が鳴り響く、ポップな曲であった。僕はそれが許せなかった。
「何だよ達也!この曲は!!
「何って、良いだろ、たまにはこういうのを作っても。」
「俺らがやりたい音楽はこんなのじゃないだろ!!80年代90年代に一世を風靡した…」
「あー、前々から思ってたんだけどさ、お前の考えもう古いんだわ。」
 達也は僕の言葉を制止して言った。
「な、ふ、古いだと…古いから何が問題なんだよ!?俺らのやりたい音楽は元々そういうもんだったじゃねえか!!今さら古いからなんて理由でやめれるかよ!!
 大体そういう路線で行こうと言ったのは達也、お前の方だったろ!!
「んなことぁ俺も分かってるよ!!そりゃ俺だって本当はお前の言う音楽がやりてえよ!!でも世間は今時80年代90年代路線は求めてねえんだよ!!売れなきゃ意味がねえんだよプロを目指すならな!!
 確かに達也の言う通りかもしれない。それでも納得できないことだってある。
「だからってこんなただ流行りにこびへつらっただけの曲…」
 俺が言い返している最中に隣の部屋から壁を殴る音が聞こえたため二人とも黙りこんだ。先に静寂を破ったのは達也の方だった。
「なあ、俺ら別々にやらないか?たぶん俺とお前では音楽に対する考え方とかプロ意識の持ち方とか、そういう根幹的な部分が違いすぎる…」
 今こちらから歩み寄らないとたぶん本当に修復できなくなる。さっきまでのことを謝るなら今だ。
「...そうだな...良い機会だ。お互い別々の道を歩むのも悪くないな...」
 達也への怒りもあって僕はつい強がって心にもないことを言ってしまった。結局僕は友情よりも意地を取ってしまった。そして僕は無言で下宿を後にした。このままJackalは本当に解散なのか? ...
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