第1章 ツライは「叫ぶ」より「書く」ほうが吐き出せる。

文字数 1,055文字

「ストレスが溜まったときは、クッションに顔を押しつけて叫ぶとスッキリする」
そう聞いたことがあり、私はよく真似をしていた。しかし、叫んでみても、正直あまりスッキリしなかった。

不妊治療は、少しずつストレスが積み重なっていく治療だ。
高頻度で発生する通院に、その都度やってくる治療費の支払い。お給料のほとんどを、不妊治療に使っている現実をたたきつけられる瞬間、湧き出てくるのは将来への不安。

しかし、次に心を襲うのは、急いで仕事に戻らなければという焦りと治療で遅刻していることへの罪悪感。会社に着いてからは、遅刻の謝罪行脚と溜まった仕事を終わらせるための残業。

自宅に帰ってからは、食事の準備や片付けの山。
散らかった部屋を、見て見ぬふりして眠る頃に残るのは、ずっしりとした疲労感。
こんな1ヵ月を乗りきっても、判定日に待っているのは、陰性という結果…。

心の中にストレスの山ができていくのだ。

「あーーー、、、ダメだ。ストレスで発狂しそうだ」
不妊治療をはじめて半年経ったあたりから、こんな言葉が私の口癖になっていた。
気づけば、涙が溢れている日もあった。

「ツライツライツライツライツライ」
「なんで私だけ子どもができない?」
「こんなに頑張ったのに!」
「煙草を吸ってるあの人が妊娠して、なんで私が妊娠しない!」
ネガティブな感情で頭がパンクしそうな日は、クッションに顔を押しつけて、何度も何度も叫んだ。

しかし、スッキリしなかった。
限界だった。

そんなとき、私の目に入ったのは、黒いサインペン。
「ストレス発散の有効な手段は、紙に感情を書き出すこと」そんな言葉が、どこかの書籍に載っていたことを思い出した。

私は、ペンを握りしめて感情をノートに書き出した。
書き殴った、という方が正しいかもしれない。思いっきり書き殴った。

文章になっていなかったし、汚い言葉をたくさん使った。性格の悪い自分が出ていたし、知らない人が見たら、呪いのノートと勘違いするほどの愚痴や不満、不安な言葉を書き続けた。

でも、そのうちに、自然とスッキリしている自分がいた。

そう、悲しみや怒りは、文字にすると吐き出すことができるのだ。

不妊治療は、いつ終わりを迎えるか分からない治療。
時間もかかる、お金もかかる、周りに迷惑もかかる。
それでも、踏ん張って耐え続けるしかない。
我慢を強いられるからこそ、ネガティブな感情が生まれるのは当たり前の話なのだ。

汚い感情と共存していく、そう高を括るしかない。

そのために、ノートを1冊用意しよう。
そして、書いて、書いて、ストレスを吐き出してみよう。
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