【本の感想③】 シルエット 島本理生

文字数 728文字

【ただ一切を無視して、私の中に雨は降り続いた。
そして自分の体内に確実に響く雨音をいつまでも聞いていた。
まるでもう一つの鼓動のように】

冒頭の雨の描写が印象的でした。
恋愛における悲喜交々が繊細に美しく描写されていて、素敵な作品です。

***

島本理生さんの作品を読むと、私の思う小説の醍醐味をこれでもかと味わえます。
ハラハラさせる展開や先へ先へと読みたくなるテンポの良い掛け合い、
魅力的なキャラクターが登場する小説ももちろん素敵です。
伊坂幸太郎さんの『マリアビートル』とか、大好きです☺
(ブラッド・ピット主演でハリウッド映画化も、楽しみです)

でも私が一番読んだ後、心が洗われたように思えるのは、
格好良く言うと「世界の見方が変わる」のは、
恋愛でも家族ものでも何でも良いんですけど、
「それに対する感情を抱くことの喜びと悲しみを繊細に描いている」作品です。

島本理生さんの作品はいつも恋愛の良い部分と、悪い部分がありありと伝わってくるんです。
紙に印刷された文字をただ読んでるだけなのに、感情が生きていると思います。
(自分の幼かった恋愛を思い出して、「うわあ」と叫びたくなる時すらあります☺)

ただその感情はいつも曖昧なものなので少しでもバランスを崩すと
後味が悪くなったり、いまいち伝わらないものになってしまいます。
その感情を出会ったこともない読者に届けられているということは、
小説にしか出来ない素晴らしさだと思います☺

だから私は小説を読むんだと、島本作品を手にするといつも感じています。
言葉にしにくいものを物語にしてるってすごくないですか。
文章から熱を感じる作家さんほど、長く読み続ける場合が多いです。
皆さんはどうでしょうか。

読んでくださりありがとうございました。
ではまた。
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