神秘

文字数 387文字

 子ども達が育ってから知った。女性の体は、子宮で赤ちゃんを育てる機能だけでなく、出産後も一人では生きていけない赤ちゃんのために、様々な機能が働くのだという。お乳が出て飲ませられるようになるのと同時に、赤ちゃんの父親である夫の匂いを、不快に感じるように体質が変わるらしい。なるほど、理にかなっている。出産によって傷ついた自分の体と、自分を頼りに生きている赤ちゃんを守るために、自分を傷つける可能性のあるものを遠ざけなければならないのだ。女性は、体力で敵わない相手に対し、無意識で本能的な防衛能力が備えている。
 自分と子ども達を守ろうとしていたと思う。私の場合、無意識に、夫を避けてきた時間がこんなにも長かった。それが正しかったかどうかは別として、それに気付かなければならない時が来た。子ども達の自立。母親として生きたことの達成感。それは四半世紀に渡る、長い長い幸せな夢だった。
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