家族

文字数 845文字

 四半世紀前、私は職場結婚をした。すぐに男の子に恵まれ退職、専業主婦になった。その後予定通り2歳ずつ違いで長女と二男を出産した。   
 私はサラリーマンの父と専業主婦の母の長女で、結婚したら母と同じ専業主婦になりたかった。母のように料理ができるようになりたかったし、家庭菜園で野菜を育てたかった。学校から帰ってくる子ども達を出迎え、仕事から帰ってくる夫を待ちたかった。
 夫は、お父様もお母様も教師という、当時珍しい夫婦共働きの家で育った。今のように女性の就労には理解がない時代だった。義母が夫を出産後、もらえたのは産休1ヶ月だけ。育休なしで復職しなければならなかった。生まれて1ヶ月の夫を同居の姑に預け、張ってくる乳を抑えながら義母は仕事に出た。夫と4つ違いで生まれた義弟を哺乳瓶で育てたのは姑だった。
 出会った当時、義父も義母も現役の教師で、それぞれの学校の管理職についていた。職業柄「正義」を装うご両親だった。遊びのない世間体が先に立つご両親のもと、夫は高校生の時からそれに反発し、親とは確執があると言っていた。初めてお会いした時も、親というよりは職場の上司、分かったように物言う感じが、夫の言っていたことと結びついた。
 「自分は愛のない家庭で育った。自分の育った家とは違う温かい家庭に憧れている。」だから私と結婚するのだと思った。私が仕事をやめて専業主婦になり、子ども達の側にいたいというのを、夫は受け入れた。共働きで財力ある家庭で育った夫が一人で、私と生まれてくる子ども達を養うことになる。そう思うと、私は節約と財テクに力が入った。
 「同じ轍は踏まない。」確執のある両親と同じ職業を選んだ夫はそう言った。休日もクラブ活動で家を空ける日ばかりだったけれど、自分の父親を反面教師だと言って、家に帰れば子ども達にも優しい父親だった。
 夫と私と子ども達で作る新しい家族は、順調に月日を重ねていった。
夫は仕事が忙しく、私は3人の子ども達を抱えて、専業主婦業に明け暮れた。どこの家もそんなもの。
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