家族ごっこ

文字数 741文字

育った家庭環境がどうであれ、それを理想として目指すか、そうでないものを目指すか、みんなそれを基準に新しい家庭を作っていく。
夫は、私や子ども達と一緒に何かをしようと誘うことはなかった。せっかく家に家族でいても、私が誘わなければ一緒にすることはなかった。日々家族のために、夫は仕事に追われているのだと思えば、家にいるときぐらい、好きにゆっくりしてもらえば、私はそれでよかった。
共働きで忙しい両親の元で育ち、家族旅行になんか行ったことがないと言っていた。それなら私が計画を立てて、家族旅行に行けばよかった。子ども達が喜びそうな場所を探して、夫が仕事を休めそうな日を伺って、毎年私がホテルや飛行機の予約を私が入れた。夫はそれについてきて、家族旅行を楽しんだ。
家事労働について夫への不満を連ねたところで意味はない。在宅時間の極めて短い夫に、自分で気づいてやってほしいというのは無理だ。声をかけて頼んだところで、やったことのないことは誰だって初めはうまくいかない。やりたくないのにやらされることは誰だって楽しくない。気を使ってやったのに、うまく出来なくて文句を言われるのではやる気は失せる。
ゴミの日に、私が持っていくだけに用意したゴミ袋を車に積んで、出勤途中に出していく。数少ない休日、洗濯機が洗った洗濯物を干し、取り入れてたたむ。作ってもらった食事を、感謝して残さず食べる。お風呂の残り湯を落として、新しくお湯を入れる。妻と子ども達を先に入れて、自分は最後にお風呂に入る。夫にとって、それが私達と家族でいるということで、家族を気遣うことの全てだった。
私は、家事や育児が自分のペースでこなせるようになっていくことを、十分楽しんだ。日々成長していく子ども達と一緒に、自分も成長していく感じがした。
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