第9談 AIが生み出す理想の女性?

文字数 1,862文字

おはようございます。

最近、AIが話題です。第1談で取り上げたChatGPTのような文字主体のものだけでなく、AIによって生み出されたグラフィックイメージ(CGI=computer generated imagery)がネットやマスコミを賑わせています。
その中でも、多くの男性(だけじゃないですが)が興味を持つのが、AIが作りだした美女や美少女。

つい先日、『週刊プレイボーイ』(集英社)が「実在しない”妹系美少女”」としてグラビア写真集を発売した「さつきあい」(版権の問題があるので画像は載せませんが、検索すればすぐに出てきます)

スイスの放送局「M Le Média」が、4月から女性気象予報士としてテレビ番組に起用したAIアバター「Jade(ジェイド)」(YouTubeで動画が見れます https://www.youtube.com/watch?v=bHniCgwhrWY)

特にJadeは日本人受けする顔立ちではないかも知れませんが、動きもリアルで、言われなければAIが作ったとは気づかないほど。

それで思い出したのは、『ガタカ』で売れっ子になったアンドリュー・ニコル監督の2作目になる『シモーヌ』という映画。もう21年も前の作品ですが。
アル・パチーノ演じる落ち目の映画監督ヴィクター・タランスキー—— タランティーノとポランスキーを足したみたいで笑えると思ったらアンドリュー・タランスキーというアスリートが後に登場してますね—— が、ファンを名乗る余命僅かなプログラマーから形見として託されたのが、画面上に理想の女優を創り出すことの出来る"SIMULATION ONE"というプログラム。
タランスキーはそのシステムでバーチャル女優を創り出し、プログラム名から「SIMONE(シモーヌ)」という名前を思いついて映画デビューさせます。シモーヌはあっという間に人気女優になりますが、バーチャルであることを公表しない(できない)ために、監督はどんどん窮地に追い込まれ、そしてついに……。
コメディ的要素もあり、怖ろしい映画ではありません。なんともトホホな主人公を名優アル・パチーノが好演していますので、興味を持たれた方は是非映画をご覧ください。

このアンドリュー・ニコル監督、『ガタカ』でデビューした直後に、ジム・キャリー主演の『トゥルーマン・ショー』(1998年)の脚本も手がけています。目の付け所が10〜20年早かったのではないでしょうか?
比較的新しいところでは『TIME/タイム』『ザ・ホスト 美しき侵略者』『ドローン・オブ・ウォー』など。多作ではありませんがコンスタントに作品を作り続けていて、巷ではSF映画監督と呼ばれているようです。
因みにこの監督、自分の作品中で理想のバーチャル女優シモーヌを演じたレイチェル・ロバーツとその後結婚しています。

理想の女性や男性を創造する行為はなにも今の時代に始まった新しい試みではなく、古くから絵画や彫刻でお馴染みです。
AIを利用したリアルな二次元キャラクターは、昨今のルッキズム(外見重視主義)批判と相まってこれからも様々な反響や批判を呼びそうですが、すぐに当たり前の物として定着しそうな気がします。

時計の針を戻すことは出来ません。
絵画や彫刻、CGの経験を持つ人はよくお判りでしょうけれど、人間の顔は左右対称ではありませんが、そういった不完全ささえも、今のAIが創り出すCG画像はクリアしているようです。
生身の人間を信じられなくなった人が、『ブレードランナー 2049』の主人公——人間ではなくレプリカントですが——のように、AIにしか心を許せなくなってしまったらなんとも悲しいですが、すでにアニメやゲームのキャラクターといった二次元の「人物」に恋をする人も少なくないようですし、今後AIが創り出したキャラクターに憧れたり恋をする人は確実に増えていくと思います。

私自身は、かつて実在した人物や動物をバーチャル化することに興味があります。
例えば、大原麗子、坂本龍一、プリンス、アイルトン・セナ、本田宗一郎……それに両親や祖父母。
ドードーやサーベルタイガーや恐竜たち。
でも、想像の世界に止めておく方がきっとハッピーでしょうね。
どこかの国の国家主席はすでにAIに人格を移植していて、肉体が滅びた後も永遠に統治し続ける……なんて近未来を舞台にしたSFを書きかけたところで、怖ろしくなって止めました。


老人は死なず、理想に程遠い人間だからこそ進化や進歩があると思うのは負け惜しみ?
(2023.6.1)
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