第9話
文字数 1,687文字
#レクチュール04
〈〈 その不幸は突然やって来ました。
ある雪の夜、妹が帰ってこなかったのです。
父は酷く動揺して、ずっと呟いては「探しに行く」と何度も邸を出ようとしましたが、雪が降っていることで諦めたのです。
夜遅くまで、私も不安で眠れませんでした。
不意に電話が不吉に鳴り響きました。
父が電話に出て話している内容を聞いていましたが、警察からの電話で「娘さんの遺体が発見されました」という内容でした。
父は送話器を落としてその場に崩れました。
そうして詳しい内容も分からないまま、私も向かった葬儀屋で妹の遺体を確認して、家族で泣き崩れたのです。その日から邸の中は一変してしまったのです〉〉
静まりかえった邸の中。
私は思わず「レクチュール」について考えていた。
けれど霊一は「電話か」と言った。
「電話?」
「個人宅に電話が通っているということは「相当に身分の高い家」ということになるな。こんな立派な西洋邸に住んでいることから「勤めている貿易会社とは政府と蜜月に繋がりがあるような会社」なのかもしれないな」
霊一の言葉で私も階段横に置かれた「電話機」を見る。
電話機は壁掛けの最新の良い物だった。その造り自体は私も知っている時代的に一般的な電話で、受話器と送話器が分かれている。
私たちは電話機の近くに「革表紙のファイル」を見つけた。
霊一がそのファイルの中を確認する。
「ファイルの中身はここの住所と電話番号か。それと各所の電話番号になっているようだ。まあ、電話機の横に置くようなファイルはそんなものか。とりあえずここの住所と電話番号くらいは、今のうちにメモしておくか」
霊一は手帳にファイルに載っている情報の一部をメモをした。
「この電話機は使えるのだろうか?」
霊一はファイルを手に取って「この電話機で外部と連絡が取れるのかもしれない」と早速電話が使えるかどうかを確認している。
「電話は……どうやら繋がるみたいだな」
電話は「交換手」へと繋がった。
『こちら電話交換手です』
交換手から「連絡先を教えてください」の言葉に霊一は次のように答えた。
「失礼「現在この電話が交換手に繋がるかどうかを確認したかっただけなんだ」使えるかどうかの確認で誰かにかけたいわけでなかったんだ。この通話は記録に残さなくてもいい。それと今日の日付と年号を教えてもらえるかな?」
交換手は「年と月と日」を答えた。
それは今日の日付と一致していた。
「どうも、では失礼する」
霊一は作法に従って電話を切った。
「電話の向こうは俺たちのもと居た世界のようだ」
電話を切ってから霊一は考える。
「外と電話が繋がることは何だか意外だな」
「あれは空間を繋げてしまうから」
「姉さんがそういう情報をどこから聞いてくるのか俺には分からない」
私は日頃オカルトな情報が耳に入る。
それは才能のあるもののもとに必要な情報が巡ってくる、というようなことだろう。霊感のない者のもとには霊的な話題は近寄らず、私のような妖しい職業の者にはどこからか勝手に聞こえてきてしまうようなものだ。
「それと感覚的なものだけど「どうやら呑み込まれたみたい」ね」
私の言葉を聞くと霊一は再び硬貨で階段の手すりをこする。
すると「傷付けられること」を確認した。
今ここで「レクチュールの中に私たちは呑まれた」悪意ある存在の世界の中に入り込んでしまうこと、それはもとの世界へ戻ることが永久に出来なくなる可能性がある。
「俺たちはこの物語と一切関係ないはずだ」
「ええ、私もそう思うわ」
「その関係は「今レクチュールを聞いたところから繋がりを持った」おそらくこのようにして他の犠牲者たちはここに呑み込まれていったのだろう。レクチュールを聞かせてこの場へ存在を取り込んでいる」
レクチュールの中、私は霊一に話しかける。
「ここまでの物語を整理しましょうか?」
私たちは自分たちの置かれている状況の把握に務める。
「それが出来るのなら、さ」
霊一がそう言った次の瞬間には次の出来事が語られそうになる。
霊一は「少し黙っててもらえるかな」と空間に向かって文句を言った。
すると霊一の言葉に怒りを示すように邸全体が大きく揺れ動くのだった。
〈〈 その不幸は突然やって来ました。
ある雪の夜、妹が帰ってこなかったのです。
父は酷く動揺して、ずっと呟いては「探しに行く」と何度も邸を出ようとしましたが、雪が降っていることで諦めたのです。
夜遅くまで、私も不安で眠れませんでした。
不意に電話が不吉に鳴り響きました。
父が電話に出て話している内容を聞いていましたが、警察からの電話で「娘さんの遺体が発見されました」という内容でした。
父は送話器を落としてその場に崩れました。
そうして詳しい内容も分からないまま、私も向かった葬儀屋で妹の遺体を確認して、家族で泣き崩れたのです。その日から邸の中は一変してしまったのです〉〉
静まりかえった邸の中。
私は思わず「レクチュール」について考えていた。
けれど霊一は「電話か」と言った。
「電話?」
「個人宅に電話が通っているということは「相当に身分の高い家」ということになるな。こんな立派な西洋邸に住んでいることから「勤めている貿易会社とは政府と蜜月に繋がりがあるような会社」なのかもしれないな」
霊一の言葉で私も階段横に置かれた「電話機」を見る。
電話機は壁掛けの最新の良い物だった。その造り自体は私も知っている時代的に一般的な電話で、受話器と送話器が分かれている。
私たちは電話機の近くに「革表紙のファイル」を見つけた。
霊一がそのファイルの中を確認する。
「ファイルの中身はここの住所と電話番号か。それと各所の電話番号になっているようだ。まあ、電話機の横に置くようなファイルはそんなものか。とりあえずここの住所と電話番号くらいは、今のうちにメモしておくか」
霊一は手帳にファイルに載っている情報の一部をメモをした。
「この電話機は使えるのだろうか?」
霊一はファイルを手に取って「この電話機で外部と連絡が取れるのかもしれない」と早速電話が使えるかどうかを確認している。
「電話は……どうやら繋がるみたいだな」
電話は「交換手」へと繋がった。
『こちら電話交換手です』
交換手から「連絡先を教えてください」の言葉に霊一は次のように答えた。
「失礼「現在この電話が交換手に繋がるかどうかを確認したかっただけなんだ」使えるかどうかの確認で誰かにかけたいわけでなかったんだ。この通話は記録に残さなくてもいい。それと今日の日付と年号を教えてもらえるかな?」
交換手は「年と月と日」を答えた。
それは今日の日付と一致していた。
「どうも、では失礼する」
霊一は作法に従って電話を切った。
「電話の向こうは俺たちのもと居た世界のようだ」
電話を切ってから霊一は考える。
「外と電話が繋がることは何だか意外だな」
「あれは空間を繋げてしまうから」
「姉さんがそういう情報をどこから聞いてくるのか俺には分からない」
私は日頃オカルトな情報が耳に入る。
それは才能のあるもののもとに必要な情報が巡ってくる、というようなことだろう。霊感のない者のもとには霊的な話題は近寄らず、私のような妖しい職業の者にはどこからか勝手に聞こえてきてしまうようなものだ。
「それと感覚的なものだけど「どうやら呑み込まれたみたい」ね」
私の言葉を聞くと霊一は再び硬貨で階段の手すりをこする。
すると「傷付けられること」を確認した。
今ここで「レクチュールの中に私たちは呑まれた」悪意ある存在の世界の中に入り込んでしまうこと、それはもとの世界へ戻ることが永久に出来なくなる可能性がある。
「俺たちはこの物語と一切関係ないはずだ」
「ええ、私もそう思うわ」
「その関係は「今レクチュールを聞いたところから繋がりを持った」おそらくこのようにして他の犠牲者たちはここに呑み込まれていったのだろう。レクチュールを聞かせてこの場へ存在を取り込んでいる」
レクチュールの中、私は霊一に話しかける。
「ここまでの物語を整理しましょうか?」
私たちは自分たちの置かれている状況の把握に務める。
「それが出来るのなら、さ」
霊一がそう言った次の瞬間には次の出来事が語られそうになる。
霊一は「少し黙っててもらえるかな」と空間に向かって文句を言った。
すると霊一の言葉に怒りを示すように邸全体が大きく揺れ動くのだった。