ファンシーショップふぶき・3
文字数 2,342文字
おっさんの言葉を完全に無視。
私はスマートフォンで《葛城企画》をネット検索。
該当する会社のホームページが表示される。どうやら実在する模様。
怪しさは満開で丁度見頃なんですが、正直な所、今この失業の瞬間から就職のチャンスが転がってきた事を若干ラッキーだと捉えている私が居ます。
どうでしょう?食いつなぐ為にとりあえず面接を受けて、次の就職までの繋ぎとして活用させて頂きたい物件ですね。
府外から来られる方を観光案内する時、特に喜ばれるのは『新世界』と『なんば』です。
どちらもテンプレートな『大阪らしさ』を醸し出しているらしく、阿倍野ハルカスや大阪城に連れて行っても今一つ反応は良くありません。それは一重にメディア露出している〝大阪〟の部分が通天閣と道頓堀くらいしか印象に残らないからかも知れません。
地下鉄御堂筋線なんば駅。改札を出てごった返す人混みをくぐり抜け、マルイの地下入り口を横目に見ながら1番出口を上がり地上に出た。
私は昨日おっさんから貰った名刺に書いてある葛城企画の住所をナビタイムに入れてみる。
それ程遠くは無い様です。あまり気乗りしない重い足取りでとりあえずそちらに向かってみる事にします。
やっぱり女の子としては職場が南船場とか堀江とか、ちょっとオシャンティな所がそそられますね。私はずっと天王寺住みなのでキタよりミナミの方が近いのですが、人混みが嫌いなので余り近寄りません。
何たって人口密度の高い空間が広大に拡がっていますし、窒息しそうになりますからね。
あと陽射しも嫌いです。
そうこうしながら歩きスマフォしていると目的地に到着しました。
外観は…まあ普通のオフィスビルですね。三階建て。玄関ホールには一様小さな受け付けがあります。でも人はいません、ボタンタイプの呼び鈴だけが寂しそうにカウンターの上で暇を持て余しています。押してみましょう。