ファンシーショップふぶき・2
文字数 3,516文字
パタン。
…え?
課長的な?え?何あれ?
なんかブリーフ一丁の眼鏡でハゲ散らかした幸薄そうなサラリーマン的なモノが入ってたんですけど?
パカッ
「ええと…おそらく見ず知らずの初対面の人間を罵倒する人物は立派では無いと世間は考えるのでは…それに話しが支離滅裂で要領を得ません、部下に追い剥ぎされるとは?何故深夜のこんなトコでブリーフ一丁なんですか?具体的に仰って頂けたら私も『見なかった事にする』or『警察に通報する』の判断が付きやすいのですが…」
「ちょ!ちょっと待って!ごめん!悪かった!おっさんが悪かった!通報とかやめて!怪しい者じゃないからね⁉︎普通のおっさん、俺普通のおっさん。おっさん女房も子供もいます!家のローンも後15年も残ってますし!逮捕とかされたらもう首吊るしか手立てがなくなる!」
「怪しい者じゃないって…360度惜し気もなくパノラマ撮影で怪しい者ですけどね。怪しくない要素見つけ出す方が至難の技じゃないでしょうか。まあ私に危害が及ばなければ道端の段ボールおっさん一人二人どうなろうが知ったこっちゃないのですけどね。」
生暖かい風が不毛なやり取りをあざ笑う様に吹き抜けた。
「君はほんと話しが進まないわ。会話のみで疲弊するわ。あのね?君は今無職でしょ?助けてもらったらタクシー代返すのと並行して、ウチの面接受けて、就職の方が有利になる様に取り計らう位は出来るんだよって事。それで利息分払う形にならないかって事だよ。」
「待ちたまえよ!俺がどんだけ毎日専務に媚び売って生きてると思ってんの?専務が喜ぶなら歓喜して革靴舐める勢いで出社してるよ?専務が雨だって言えば晴れてても傘さすし、専務がマレーシアは中近東って言えば資料室の世界地図全部書き直すよ?」
「ばかやろう!俺が裏で社内で何て呼ばれてると思ってんだ!『専務の犬 』だぜ⁉︎初めて給湯室の前通って、女子社員が俺の事ジョンって呼んでるの知った時は流石に早退したけどね⁉︎それでも毎日専務のご機嫌取りだけを考えて出社しとるんだよ⁉︎」
ヨレヨレの名刺に目を通す。
【(株)葛城企画 企画マーケティング部一課課長