第85話 虫歯との戦いに挑むみーちゃん

文字数 814文字

 今日のみーちゃんは歯医者さんに行きます。

 みーちゃんは、3か月に1度、北上川沿いのタケダマンションの7階にあるデンタル関口で歯の定期健診をしています。ほんとうは毎日通いたいのです。なぜって、みーちゃんは歯医者さんに行くのが大好きだからです。

 その日のくるのがいつも待ちきれなくて、前の晩から「虫歯があったら、どうしよう、どうしよう、どうしよう」とドキドキします。でも、このスリルがたまらないのです。

 これはみーちゃんと虫歯の間のゲームです。虫歯がなければみーちゃんの勝ち、虫歯があればみーちゃんの負けです。

 みーちゃんの将来の夢は探偵になることですから、ゲームに強くなくてはいけません。

 あごひげをはやした関口先生から、「はい、虫歯はありません。よくがんばったねえ。これからもこの調子で歯みがきとフロスを欠かさないようにね」と言われると、ほっとした後に、じわじわと勝利の喜びがわきあがってきます。

 勝ったときは、おかあさんに頼んで、お祝いをします。川徳でジャージャーメンかオムライスを食べて、神田精養軒のマドレーヌかアップルパイをおみやげにするのです。神田精養軒のお菓子は甘すぎず、自然のものを使っているからとおかあさんもお気に入りです。

 実は、前回、みーちゃんは負けています。小さな虫歯が左下の奥歯に一つ見つかっています。初めての負けでしたから、虫歯の高笑いが聞え、悔し涙にくれています。常勝神話が崩れたみーちゃんは再起を誓います。

 雪辱を期してみーちゃんは、それまで以上に歯みがきとフロスにはげんでいます。くじけそうになったときには、虫歯の「おまえはもう終わりだ、この負け犬!」という笑い声を思い出して奮起しています。努力はうそをつきません。

 運命の日を迎えます。おかあさんがマンションのエレベーターのボタンを押します。

 ──虫歯くん、今度はきみの負けだ。私に2度目はない。

 決意を胸に虫歯に勝負を挑むみーちゃんなのです。
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