『勝也*小国を席巻す』 前編
文字数 1,891文字
『ジエチル*エテンザミド@トリプトファン+』一年ぶり、ライブツアー開始。
勝也と桃子は、すかさずネットニュースに飛びついた。
「かっちゃん、当然行くよね、ね、ね、」
桃子は、興奮を隠す事なく勝也に詰め寄った。
少し鼻を膨らませているが、何故 かちょっと『カワイイ』
「バカヤロー、あたりめーだろーが。待ちに待ったライブだぜ……。一年も待たせやがって『ジエ太郎』さんよー。がっはっはっ」
勝也も、かなり乗り気である。
「トリプトファン(サイドギター)がプラス(加入)されてから、初めてのライブだもんねー、盛り上がるだろなー」
桃子が、かぶせると。
「バカヤロー。おかげ様で、俺のバンド名まで長ったらしく、なっちまっただろーが。俺……、ソロだけど……。がっはっはっ、がっはっはっ」
すごい……『ジエ様』パワー。近年まれにみる機嫌の良さで答えた。
「で、どこ申し込む」
珍しく勝也が、チケットの段取りをしている。一抹の不安がよぎるのは、桃子以外の万人であろう。
「第一希望は『東京ドーム』でしょ。そこだけは、譲れない」
桃子にも譲れない所はある。
「まぁ、まぁ、まぁー。そぅ来るわな。で……、第二希望は」
勝也も、ドームには賛成らしい。
「埼玉スーパーアリーナだろ。第三は任せるわ」
いいのかい?桃子さん。勝也に任せて大丈夫?
「OK、了解。任せとけ、ベイビー」
勝也は、チケットの予約を買って出た。
チケット抽選当日。
「ジャーン、開きまーす」
ノリノリで、勝也がスマホを開いた。桃子も胸に手を当て、祈る様にスマホを凝視している。
そして、開催事務局からのメールを開くと。
当たったー。
『当選おめでとうございます』が、メール上部の件名に記されていたのだ。
二人は、気勢と共に抱き合い、喜びを分かち合っている。こんな事、桃子の誕生日以来であろう。
いやいや待て、喜ぶのはまだ早い。次なる難関『東京ドーム』は、如何 に……。
勝也が恐る恐る、メール画面をスクロールした。
ライブ開催日、3月15日(水曜日)
二人は確認した瞬間、目を合わせ、うなずき合った。日にちと曜日は、問題なさそうである。
いずれにしても桃子は『妊娠目的』と称し、専業主婦であり。勝也も職場では、重要視されておらず、いつでも休めるのだ。
こんな真正直で頑張れる男を使えない『会社側に問題がある』と、思うのは本人と桃子だけでは無いであろう。
良い意味で『馬鹿と鋏 は使いよう』上手く使えば、かなり会社貢献できる。たぐいまれなる、逸材 を……、もったいない。
最終難関。
開催地『結城市民文化センターアクロス』収容(約1300人)
「おい……。かつ……。どーゆーこった」
桃子は開催地を確認した途端、瞬きが早くなり目を擦りながら勝也に詰め寄った。
「ちっ……、第三希望だったなー。でも……ええやん。がっはっはっ」
舌打ちをしても、笑っている。
桃子の反応が『意外だった』かの様に『無理くり』笑っているのだ。
「かっちゃんさー。五十歩譲って『横浜』百歩譲って『水戸』だろー。その選択肢は無かったの?ねぇ、何で『結城』なの。同じ茨城県だってか(変なオジサンぽく)」
意外と桃子は場所に、こだわっている。大きい会場の方が『盛り上がれる』と、思っているのであろう。行った後の『自慢話』にしても『有名な会場』の方が、マウントを取りやすいのは事実である。
「小さい会場の方が、近くで見られて、良くね。しかも車で一時間ちょい。俺、マイカー持ってねーから電車だけど。中々の穴場じゃね」
どうした勝也、君らしくない。正論だ。
「あっ、そー。ちゃんとチケット代、振り込んどいてよ」
流石 に桃子も、反論を諦 めた様である。
そして数日後、勝也はチケット代の入金を済まし、ツアー用Tシャツをネットで購入した。
なぜか最近、勝也がおかしい。全て完璧に、こなしているのだ。
勝也の失敗を、期待している訳では無いが。持ち前の『ガムシャラ感』が、感じられないのだ。くれぐれも『小さく、まとまらないでほしい』と、心から思う。
ただし、幾分の片鱗 だけは残していた。Tシャツのセレクトが凄 いのだ。
数ある『ジエチルTシャツ』の中で『これだけは、ライブ会場でしか着られないであろう』と思われる、派手派手な柄をチョイスしたのである。
恐らく、ライブ当日一日だけで、タンスにしまわれる代物であり。是非とも、他に寄り道せず、直行直帰でお願いしたい。
更に桃子も、中々の『つわもの』で。何一つ、文句も迷いも無く試着して。
「サイコー……」
と、叫んでいたのだ。
勝也と桃子は、すかさずネットニュースに飛びついた。
「かっちゃん、当然行くよね、ね、ね、」
桃子は、興奮を隠す事なく勝也に詰め寄った。
少し鼻を膨らませているが、
「バカヤロー、あたりめーだろーが。待ちに待ったライブだぜ……。一年も待たせやがって『ジエ太郎』さんよー。がっはっはっ」
勝也も、かなり乗り気である。
「トリプトファン(サイドギター)がプラス(加入)されてから、初めてのライブだもんねー、盛り上がるだろなー」
桃子が、かぶせると。
「バカヤロー。おかげ様で、俺のバンド名まで長ったらしく、なっちまっただろーが。俺……、ソロだけど……。がっはっはっ、がっはっはっ」
すごい……『ジエ様』パワー。近年まれにみる機嫌の良さで答えた。
「で、どこ申し込む」
珍しく勝也が、チケットの段取りをしている。一抹の不安がよぎるのは、桃子以外の万人であろう。
「第一希望は『東京ドーム』でしょ。そこだけは、譲れない」
桃子にも譲れない所はある。
「まぁ、まぁ、まぁー。そぅ来るわな。で……、第二希望は」
勝也も、ドームには賛成らしい。
「埼玉スーパーアリーナだろ。第三は任せるわ」
いいのかい?桃子さん。勝也に任せて大丈夫?
「OK、了解。任せとけ、ベイビー」
勝也は、チケットの予約を買って出た。
チケット抽選当日。
「ジャーン、開きまーす」
ノリノリで、勝也がスマホを開いた。桃子も胸に手を当て、祈る様にスマホを凝視している。
そして、開催事務局からのメールを開くと。
当たったー。
『当選おめでとうございます』が、メール上部の件名に記されていたのだ。
二人は、気勢と共に抱き合い、喜びを分かち合っている。こんな事、桃子の誕生日以来であろう。
いやいや待て、喜ぶのはまだ早い。次なる難関『東京ドーム』は、
勝也が恐る恐る、メール画面をスクロールした。
ライブ開催日、3月15日(水曜日)
二人は確認した瞬間、目を合わせ、うなずき合った。日にちと曜日は、問題なさそうである。
いずれにしても桃子は『妊娠目的』と称し、専業主婦であり。勝也も職場では、重要視されておらず、いつでも休めるのだ。
こんな真正直で頑張れる男を使えない『会社側に問題がある』と、思うのは本人と桃子だけでは無いであろう。
良い意味で『馬鹿と
最終難関。
開催地『結城市民文化センターアクロス』収容(約1300人)
「おい……。かつ……。どーゆーこった」
桃子は開催地を確認した途端、瞬きが早くなり目を擦りながら勝也に詰め寄った。
「ちっ……、第三希望だったなー。でも……ええやん。がっはっはっ」
舌打ちをしても、笑っている。
桃子の反応が『意外だった』かの様に『無理くり』笑っているのだ。
「かっちゃんさー。五十歩譲って『横浜』百歩譲って『水戸』だろー。その選択肢は無かったの?ねぇ、何で『結城』なの。同じ茨城県だってか(変なオジサンぽく)」
意外と桃子は場所に、こだわっている。大きい会場の方が『盛り上がれる』と、思っているのであろう。行った後の『自慢話』にしても『有名な会場』の方が、マウントを取りやすいのは事実である。
「小さい会場の方が、近くで見られて、良くね。しかも車で一時間ちょい。俺、マイカー持ってねーから電車だけど。中々の穴場じゃね」
どうした勝也、君らしくない。正論だ。
「あっ、そー。ちゃんとチケット代、振り込んどいてよ」
そして数日後、勝也はチケット代の入金を済まし、ツアー用Tシャツをネットで購入した。
なぜか最近、勝也がおかしい。全て完璧に、こなしているのだ。
勝也の失敗を、期待している訳では無いが。持ち前の『ガムシャラ感』が、感じられないのだ。くれぐれも『小さく、まとまらないでほしい』と、心から思う。
ただし、幾分の
数ある『ジエチルTシャツ』の中で『これだけは、ライブ会場でしか着られないであろう』と思われる、派手派手な柄をチョイスしたのである。
恐らく、ライブ当日一日だけで、タンスにしまわれる代物であり。是非とも、他に寄り道せず、直行直帰でお願いしたい。
更に桃子も、中々の『つわもの』で。何一つ、文句も迷いも無く試着して。
「サイコー……」
と、叫んでいたのだ。