第12話 エピローグ

文字数 970文字

「名残惜しいわ……彼ら、新しいダンサーを見つけられるかしら……」
「見つけられるさ、国境と人種の枠を超えてね」
「それもそうね……」

    ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪

 世界同時中継ライブは大きく世界中の世論を揺り動かした。

「もうミサイル・バトルは沢山だ、音楽で世界はわかり合えたじゃないか、政治もそれを見倣うべきだ……」

 約一年後、国連本部の総会議場で三大バンドによる本物のジョイントコンサートが催され、その席上で三国の指導者は握手を交わし、肩を組んでカメラに収まった。

 イーゴリとユリアが同じ日、同じ場所で、ルイを立会人に結婚誓約書にサインしたのは、まあ、冷戦停止に比べれば小さなニュースに過ぎなかったが……。

 地球上にはまだまだ飢餓や貧困がはびこり、環境問題なども山積みではある。
 三つの大国も利権や領土拡大の野心を棄てたわけではない、長期にわたって三すくみの状態が続き疲弊していた所へ、三大バンドが休戦のキッカケを作ってくれた事に飛びついたまでのこと、真の平和、恒常的な平和を実現する道のりはまだまだ長い。
 しかし、戦火が収まったのは大きな前進だ。
 そして、異なる国がお互いの文化や宗教を尊重する機運も高まり、定着しつつある。
 とにもかくにも、その第一歩は踏み出した、M星人の出番はここまでだ。
 
 M星の宇宙船はハワイ沖から人知れずに飛び立った。

    ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪

 その時、ハワイの天体観測所は賓客を迎えていた。
 国連のルイ事務総長だ。
 彼は宇宙船が見えなくなるまでじっと望遠鏡を覗き続けていた。

(ボビー、ありがとう、長いお別れになるだろうが、ボビー・カムバックとは言わないよ……)
 ルイ事務総長はそう心の中で呟いた。

 M星のアンテナはこれからも地球の電波を捉え続け、ロックン・ロールのみならず、地球で生み出される様々な音楽を享受し続けることだろう。
 地球人はM星人に恥じることのない、平和な地球を自らの手で築いて行かなければならない、もうM星人の力を借りるようなことがあってはならない。
 ルイは、そう心に誓うのだった……。


              The End ・ 完 ・ ?окончание


   
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