第7話 乖離
文字数 764文字
三世代目になる頃、六人のホモ・サピエンスが野丸の遺伝子を引き継いでいた。第一世代は地球時代からの名前を保有していたが、名前というシステムが合理的に作られていないと判断され、この世代から廃止になった。彼らは「3-N」と称される。「3」は第三世代を意味し、「N」には、その世代の出生順に番号が付く。1から最大100で終わるので、データ整理はコンピューターに頼らなくとも可能な範囲だ。きょうだいの識別はこのナンバリングでは不明だが、遺伝情報はしっかり保管されており大きな問題は生じなかった。そして人種的な特徴は徐々に失われていった。
第三世代が「ノア」の主力になる頃、地球からの観光ツアーが盛んとなった。ここまでの移動時間が三週間に短縮されたことと、工学・生物学的な処置を受けない純粋なホモ・サピエンスが、「ノア」からの逆移住者以外に存在しなくなってしまったことが契機だった。地球からのインバウンドは経済効果が大きい。一方で雑種の混入、さらには「ノア」への亡命者が出ないよう、取り締まりが強化された。
地球に残る「ホモ・サピエンス」から見ると、「ノア」のホモ・サピエンスは憧れであり、見世物だった。彼らは純粋なホモ・サピエンスを保護した先祖を称え、有事の際にはこれを利用しようと考えた。「ノア」を制御している人工知能は、自ら学習し、進化することができたが、このホモ・サピエンスの現状維持だけは変更できない使命だった。したがって地球上の「ホモ・サピエンス」の目論見とは徐々にズレが生じ始めた。政治的な乖離と共に、地球との断絶は徐々に広がっていった。そして、「ノア」では、地球の「ホモ・サピエンス」、すなわち地球人の見世物であり保険的な生物であることを否定しようという運動が盛んとなり、地球人を敵視するという発想も見られるようになった。
第三世代が「ノア」の主力になる頃、地球からの観光ツアーが盛んとなった。ここまでの移動時間が三週間に短縮されたことと、工学・生物学的な処置を受けない純粋なホモ・サピエンスが、「ノア」からの逆移住者以外に存在しなくなってしまったことが契機だった。地球からのインバウンドは経済効果が大きい。一方で雑種の混入、さらには「ノア」への亡命者が出ないよう、取り締まりが強化された。
地球に残る「ホモ・サピエンス」から見ると、「ノア」のホモ・サピエンスは憧れであり、見世物だった。彼らは純粋なホモ・サピエンスを保護した先祖を称え、有事の際にはこれを利用しようと考えた。「ノア」を制御している人工知能は、自ら学習し、進化することができたが、このホモ・サピエンスの現状維持だけは変更できない使命だった。したがって地球上の「ホモ・サピエンス」の目論見とは徐々にズレが生じ始めた。政治的な乖離と共に、地球との断絶は徐々に広がっていった。そして、「ノア」では、地球の「ホモ・サピエンス」、すなわち地球人の見世物であり保険的な生物であることを否定しようという運動が盛んとなり、地球人を敵視するという発想も見られるようになった。