四大天使のクリスマス2

文字数 8,085文字

「ねえ」
「なんだ?」
「今年もやろうよ!」
「なにをだ?」
「なにって決まってんじゃん12月、Decemberといえばあのイベントだよ!!」
「年の瀬だろうと我々天軍は通常運行だ。なにも無いぞ。我々天軍のハッピーニューイヤーは早朝出勤から始まるのだからな」
「改めて思うと天軍ってブラックな職場ですね~」
「ウリエル、あなたはなんだかんだ仕事を部下に押し付けまくって自分は天界生活を満喫してるじゃないですか」

 天軍の中央拠点の教会内、台座の上に投影された4人の天使が話している。きりっとした目付きと顔立ちから厳格さを見せるミカエル、モノクルを掛け知的な印象を抱かせる天使ガブリエル、おっとりとした雰囲気を漂わせている金髪の天使ウリエル、言動や外見から幼さを見せる天使ラファエル。
 ここは天界最強の組織「天軍」の師団長である天使4人が離れた場所からも好きに通信できるように設計されている。ここで互いに情報交換や会議を行うのである。とはいえここにミカエル、ガブリエル、ウリエル、ラファエルが揃うことは稀である。今日はラファエルの呼び出し(高確率でなにかしらおねだりされる)で集まっている。

「ミカエルは素直になってくださいよ~。しらばっくれる必要ないじゃないですか」
「そうだよ去年のこともう忘れちゃったのミカエル」
「まあミカエルは忘れっぽいですから去年の記憶がとんでいたとしても不思議ではないでしょう」
「____鮮明に覚えてるうえで敢えて言ってるだけだ。ガブリエル、どさくさに紛れて私をディスるな」
 さりげなく嫌味をいれてくる。ミカエルとガブリエルは相変わらずの関係だ。
「じゃあ、ミカエルもなにやるのか分かるでしょ」
「先に言っとくがクリスマスパーティーとやらは今年はやらんぞ」
「でもみんな楽しそうだったよ?」
「後始末終わった時には皆死にそうな顔をしていたがな」
「士気の向上にも____」
「去年もそんな建前でやったがその結果二日酔いだのなんだので翌日の業務に支障が出ていたのを知っているぞ」
「ガブリエル、シュクレのスイーツまた食べられるよ」
「またそれかワンパターンの懐柔策だな。ラファエル、もう少し頭を捻れ。ガブリエル、お前は曲がりなりにも天軍のクールな指揮官という設定だった筈だ。こんな単純な策に二度も掛かるつもりか。お前はそんなに愚かな天使だったのか?」
 ミカエルの言葉を文字通りに受け取り首を捻り頭を後ろまで回そうとうんうん唸っているラファエルを横目にガブリエルに牽制の言葉を投げかける。
 以前は引き留める間もなくガブリエルがラファエルに籠絡させられたせいで多数決で押し切られてしまった。同じ轍は踏むまい。

「あなたに言われるまでもない。今回は私もクリパは反対するわ。シュクレのスイーツも……我慢するわ____うぅ」
「未練たれたれですよガブリエル」
 口ではそう言うが実際はちょっと落ち込んだ顔をしているガブリエルだった。
「ほんとに?ガブリエルもほんとは食べたいよねえケーキ」
「ガブリエル……分かってるだろうなあ?」
「くっ……天使と悪魔が私に競って囁きかけてくる!!」
 両者の視線に挟まれたガブリエルは悩む。ちなみに天使がラファエルで悪魔がミカエルだ。とはいえある程度答えは決まっていたので悩む時間は短かった。ガブリエルはラファエルの方を向き。
「____ラファエル、申し訳ありませんが今回はミカエル側に付くことにします。____主よ、悪魔に与するこの私の事をどうかお許しください」
「おい」
「ガブリエルも成長しましたねえ」
「そういうウリエル、お前はどうなんだ」
「私は中立派ですよ~」
 相変わらずなにを考えてるか分からずどっちつかずの返答が多いぬらりくらりとしているウリエル。最近、この天使は四大天使のなかで一番底知れないのではとミカエルは思い始めている。
「ともかく今回は私とガブリエルは反対。ウリエルはどちらでもない。よって反対派が優勢なのだラファエル」
「ぶー、ガブリエルも去年は喜んでたくせに今年もやろうって約束してたのに」
 ラファエルは不満げにガブリエルを責める。
「去年とは状況が違うのですよラファエル。天軍と魔界の間の戦いが頻発しつつあるのです」
 最近、魔界の魔物たちの動きが活発化している。鳴りを潜めていた七大魔王が再び目撃されるようになり不穏な空気に天界は包まれている。天軍は四六時中天界への脅威を警戒していなければならないのだ。気を抜ける時間は一時も無い。しかしそれを説明してもなおラファエルは不満そうだった。
「ええー、楽しくないなあ」
「今はそういう状況ですから自粛してください。ラファエルも第六師団を束ねる師団長なのですからいい加減自覚をもって行動してください」
 ぴしゃりとガブリエルに釘を刺されラファエルは押し黙るしかなかった。
「では私は仕事に戻るぞ」
「私もこれで。ラファエル、あなたも早く戻った方がいいですよ。ここの交信、結構馬鹿にならないエネルギーを消費しますからいつまでも接続してるといざという時に体が動けなくなりますよ」
 そう言い残しミカエルとガブリエルの立像が消えた。こことの交信を切ったのだろう。こうして部屋の中にはラファエルとウリエルの2人が残された。

「2人ともつまんないの。ウリエルもなんか言ってよ」
 残された最後の天使にラファエルは不平不満をもらす。
「う~ん私も手前、中立派って言ってましたけど。ミカエル達の言ってることのほうが理に適ってるんですよねえ」
「じゃあウリエルも同じ意見ってこと?ええープレゼント交換しようよみんなと楽しもうよウリエルだって旅行券引き当てて楽しんでたよねガブリエルもミカエルもなんか良さそうなプレゼント貰ってて嬉しそうだったよね」
「当てたのは偶然ですから今年はいいプレゼントが貰えるとは限りませんよ~。____ラファエル、あなたは去年のプレゼント交換のことまだ根に持ってるんですか?というかラファエルが執拗にクリスマスパーティーしようとしてるのそれ目的なんじゃないですか?」
「な……なに言ってるんだよウリエル。僕はそんなつもりじゃないよお」
 そう言うラファエルの視線は焦点が合わず泳いでる。なんて分かりやすいんだろう。そういう部分がまた愛らしいのだが。そう思いながらウリエルは彼女に提案した。
「では、こうしましょう。今年はクリスマスパーティーはできませんがプレゼントはしましょう。それだけでも天軍の皆さんは喜ぶと思いますよどうでしょう?」
「プレゼント?うーん、それなら……でもミカエル達にどう言えばいいの?また反対されたら僕……」
「そこは心配なく私に考えがあるんですよ」
 こうしてウリエルラファエルプレゼンツクリスマスプレゼント大作戦が始動した。




******

 運び屋リンナの朝は早い。全世界に知れ渡る有数の運び屋であるリンナの元には日々数え切れない依頼が舞い込んでくる。クリスマスのような時期は特に忙しく手に余るほどの仕事が待っている。それでもリンナは出来るだけ多くの依頼を受けるようにしている。
 何故なら彼女には多くの人間を喜ばせたいという強いポリシーがあるからだ。
 普段は手紙を送ることが多いのだがこの日は物を運搬する仕事ばかりやってくる。それもそのはずこの日はプレゼントを贈りたい者が山ほどいるクリスマスなのだから。こういった日にはリンナは膨大なプレゼントの配達を任されるのだ。

 そして今年はそんな中でも大仕事になるだろう依頼が一件入ってきた。依頼内容は「天軍の人々にプレゼントを届ける」という内容だった。流石に世界をまたにかけるリンナでもこんな大規模な依頼は初めてだ。だが彼女のプライドにかけこの任務は達成してみせると決めた。

******

 そして迎えたクリスマス当日。

「プレゼント♪プレゼント♪」
「ラファエル、嬉しそうね。なにかあったの?」
 妙に上機嫌なラファエルに幼馴染兼第六師団長代理のヘミエルが話しかける。
「ヘミエル、聞いて聞いて!今日はねみんなにサプライズがあるんだよ」
「____もしかしてさっきからうわ言のように言ってるプレゼントの事ですか?今年はそういった催しはやらない事になっていた筈ですが」
「うん、やらないって言ってたけど僕とウリエルでみんなにプレゼントを渡そうって決めたんだガブリエルとミカエルには内緒で!」
「はあ、そうですか……それでどのように?」
 天軍のみんなとラファエルが言っているのなら対象にミカエルやガブリエルの率いる師団も含まれているのだろう。しかし彼女らはここから遠く離れたところにいる。雪吹雪く山岳地帯を跨いだ先、魔界近くまで遠征している部隊。彼女らには秘密にしたうえでどのようにプレゼントを贈るつもりなのだろうか?正直、なにか嫌な予感がする。ラファエルの起こすトラブルにいつも巻き込まれているヘミエルは直感がそう告げた。
「悪い事は言いませんからやめたほうが……」
「プレゼント、プレゼント」
(話、全然聞いてない……)
「プレゼント大作戦始めるぞ~」

 まず第六師団は武器庫から対戦艦にでも使うであろうどでかい大筒を引っ張り出してきた。
「大砲……ですか?」
「うん、そうだよ」
 作戦名に反してやけに物騒なものが登場しヘミエルは困惑する。

 子供でも出来る簡単お手軽プレゼント配達

 1、プレゼントボックスを大砲に詰め込む。
 2、発射する。
 3、見事着弾、作戦成功!

「そんな雑なサンタクロースがあるかあ!」
 あまりの考えなしのがばがば作戦にヘミエルは思わず突っ込みを入れた。
「でもそうしないとプレゼント届けられないよ」
「いやあ……無理してそんなことしなくても別の日に届けてもいいんじゃないですか?クリスマスに拘らずとも贈り物はいつだって喜ばれるものですよ」
「やだやだ!それじゃふぜーが無い」
 ヘミエルの物言いに駄々をこねるラファエル。風情という言葉を盾に反論する。一体、どこでそんな言葉を身につけたのだろうか?ラファエルは覚えたての言葉を使いたがる節がある。
「風情というなら尚更大砲でプレゼントを飛ばすのはやめてください。高確率で失敗しますから。だったら髭付けて真っ赤な服装のサンタクロースになってトナカイと夜を駆けるくらいしてくださいよ」
「でもサンタクロースはいないよ?」
「あの、急に夢の無い本当のこと言うのやめてもらっていいですか?」
 子供っぽいことを言ってると思いきや急にこんなことを言い出す。これがラファエル論法である。
(ああ、先が思いやられます……)
 ヘミエルは密かにため息をついた。ちなみにラファエルの尻拭いを行うのは大抵彼女である。

 ヘミエルの受難とは裏腹にラファエルの作戦は着実に進行していく。なんせ第六師団はラファエルを崇めるオタサーのような部隊だ。ラファエルイズナンバーワンエンジェル彼女の命令絶対順守のイエスマンしかいないのだ。

「完成!!」
 発射は三発、ミカエル、ウリエル、ガブリエルの部隊それぞれの方角に向かって発射する。このアルキメデス作オメガボンバーキャノンであればこの距離からでも届くだろう(とウリエルが言っていた)。弾はプレゼントボックスを一纏めにして発射の衝撃に耐えうる(とウリエルが言っていた)大袋に入れた。大砲のセッティングが完了し、うきうきのラファエル。
「祝砲の前に第六師団のみんなにプレゼントを配るよ」
「うおおおお!!」
 愛しのラファエルから貰えるとあっては第六師団が浮足立つのも仕方ない。彼女の元に殺到する。
「うわっうわっみんな押さなくてもちゃんと配るよ」
 その騒ぎを見て去年からまるで成長していない、とヘミエルは思った。

「それで私はこれ!」
 ラファエルは山積みのプレゼントの中から最初に選んだ可愛らしいお魚の縫いぐるみを両手いっぱいに抱えていた。
「うへへ―」
 縫いぐるみに包まれごろんごろんと子猫のように転がるラファエル。その無邪気な様子を見て第六師団のみなさんはおお、これが聖書の行間にあった神のお姿だのてえてえだの愛してるマイエンジェルだのそういったことを口々に呟くのだった。第六師団は今日も通常運転です。
(というか自分で持ってきてる時点でプレゼントというよりも自分へのご褒美的なあれでは?)
 ヘミエルは一人訝しんだ。

「よおし、いよいよ発射するよ」
 砲身をウリエル達のいる方角へと合わせ、ラファエルが指示を飛ばす。
「ラファエル様、軌道修正完了しました」
 ウリエルの部隊から秘密裏に借りた砲手が報告する。
「善は急げ、いくよお」
 待った、をかけることもなく大砲は塞いでた耳でさえキンと耳鳴りが鳴るほど大きく豪快な砲撃音をたてウリエル達の元へ飛んだ。プレゼントの中身はラファエルも知らない。手筈通り行ったならウリエルの方から連絡が来るだろう。
 数分後、ウリエルから無事届いたという通達があった。
「やったあ、成功だあ!」
 ラファエルは歓喜した。正直、成功するかどうか不安なところもあったがちゃんと送り届けることができた。
「よおし、じゃあミカエルとガブリエルの所にも送ろう」

 ミカエルとガブリエルの方にも一発づつ装填し撃ち込んだ。あちらもいきなり空からプレゼントが降ってきたらみんな驚くだろうなあとラファエルは一人にやにやしながらその様子を眺めていた。
 と、その時。
「メリークリスマス」
「え?」
 ラファエルたちの目の前に突然赤づくめのナイトキャップを被った人が白い布地の大きな袋を担いで立っていた。まるで話に聞くサンタクロースの姿にそっくりだ。
「フォッフォッフォッサンタからよい子のみんなにプレゼントだ」
 呆気にとられるラファエル達をよそにサンタは袋から綺麗にラッピングされた箱を次々に取り出した。そして____。

「え?」
 大きな風が吹き、思わず一同は目を閉じてしまう。次に開けたときにはそれぞれの目の前に一つづつプレゼントが置かれていた。一瞬の間にサンタがなにをしたのか把握することは誰一人として出来なかった。
「では、天軍の皆さまよいクリスマスを____じゃなかった。よいクリスマスを過ごすんじゃぞ」
 そう言うとサンタクロースはその場から消えた。実際には消えたように見えただけで足跡が続いているのでとんでもない速さで動いただけなのだろう。
「あ、うんありがとうサンタさん?」
 お礼を言う間もなく消えたサンタ。これは都市伝説になってもやむなしか。サンタはトナカイを使って移動してたんじゃなくて一人で高速移動できる超人だったのか?突然の出来事に思考がぐるぐると回り混乱しているラファエル。
「____私もびっくりしましたが、その箱開けてもいいんじゃないですか?多分、危険なものではないと思いますよ」
 彼女が周りに比べ何倍か大きいだろう箱を開けると中には美味しそうなお菓子が入っていた。
「うわあ」
 ラファエルは大いに喜んだ。プレゼントの中身がお気に召したらしい。早速切り分けられたショートケーキを食べ始めている。
「これ、もしかして伝説のパティシエシュクレの作ったケーキですか?とっても高い奴じゃないですか。しかしこれって一体誰が」
「_______ _誰でもいいよ、こんな美味しいケーキ食べられるなら誰だって。みんなも早く食べなよ早くしないと全部食べちゃうぞ~?」
 みなそれぞれプレゼントの中身を確認し喜びあった。こうして第六師団は聖夜の夜を存分に楽しむことができたのだった。

******

 雪が降る中、ガブリエルは部隊の作戦本部を陣取り指揮を執っていた。
(今頃、ラファエルは喜んでいるでしょうか?)
 謎のサンタによって届けられたプレゼントの正体、それは彼女によるものだった。ついさっきプレゼントを上司ガブリエル直々から貰い部下が有頂天になっていたところを叱責しさっさと持ち場に戻れと言ったところだ。

******

「ラファエルは今年もクリスマスが近づいたらごね始めるでしょうか」
「まあするだろうな」
 ラファエルがパーティーの提案をする少し前のこと、ラファエルを除いた四大天使がいつもの交信で会話をしていた。
「今年は難しいわね。警備を一日たりとも空けることは許されない」
 ガブリエルは昨今の状況からそう結論づけた。
「でも去年ラファエルと来年もやろうって約束したと思うわ」
 ウリエルは昨年のパーティーの会話を思い出し指摘した。
「そんな口約束、いちいちラファエルが覚えてるとも思えないのだが……」
「あの子、そういう所は抜け目なく覚えてるところあるわ」
「そうか……これは説得するのも難しそうだな」
 目下、あの天使が勝手にクリスマスパーティーの準備をしているとしてもおかしくない。どうにかできないものかと三人の天使は悩む。
「そうだな……パーティーは無理だがプレゼントを贈るくらいなら出来るかもな。というかあいつもそれで喜ぶ気がするぞ。なんだかんだあいつも単純なところはあるからな」
「まあ概ねそれでいいかも、でもあの子を説得するのは誰にしましょう。私はミカエルがいいと思うのだけど」
「さらっと私にふるな。ガブリエル、お前がやれ。あいつを説得する位できるだろ。去年シュクレのスイーツに買収された借りを返す時だ」
「ぐっ……でも結果的にあのパーティー自体はやってよかったのだからあれはノーカンでいいでしょう」
「なら誰がやるって言うんだ!?」
「誰ってそりゃあ」
 二人の視線がもう一人この場にいる天使へと向く。
「ウリエル、お前に頼む」
「私?」
 ウリエルはいきなり指名されたことに驚いた。
「消去法的にウリエルだ。ラファエルにフランクに話しかけられてかつ手綱を握れそうなのがお前しかいない」
「そうですかね~?」
「ええ、私たちの場合なにを言っても突っぱねられる気がします。その点、ウリエルは私達に比べラファエルと比較的波長が合っていると私は思ってますので丸め込みやすいでしょう」
「う~ん褒められてると見るべきか判断に迷うわね」
「兎に角ウリエルには彼女の説得を頼むわ、その代わり他の事は私達がやっておくから」
「仕方ないですね、引き受けますよ。ラファエルをあやすことなんて朝飯前ですからねえ」
 こうしてウリエルは半ば強引にラファエル説得役を任されることとなった。

 こうしてガブリエル達は密かにラファエルだけでなく天軍みんなへのプレゼント集めに勤しみその間、ウリエルはラファエルを抑えた。そして運搬はサンタに変装した運び屋リンナに任せることにした。あの竜人の脚力であれば各地に散らばった天軍にも配れると踏んでの采配だった。なんであれ、無事ラファエルも満足させついでに天軍の士気を上げることができた。
 昨年の反省を活かし今回は業務に支障をきたすことなく行うことができた。と一人で今年のクリスマスの塩梅を自己評価していたところに部下が飛び込んできた。
「ガブリエル様、報告です!」
「なんですか、急に?」
「西、9時の方向からなにかが飛んできます」
「なにか?」
「大砲の弾のようなものが」
「はい!?」

 急いで外を見るガブリエル。上空にきらきらとなにかが飛んでいて徐々に近づいているのを視認した。
「撃墜命令を!急いで撃ち落としなさい」
 慌てて指示を出す。しかし弾の接近に間に合わない。ガブリエルは被害を最小限にするため氷の盾を基地全体張ろうとした時、弾は空中で爆ぜた。
「なっ!?」
 それはきらきらとした火花を散らし開花した。立派な打ち上げ花火が空を彩っていた。
 弾が飛んできた方角をちらりと確認しガブリエルはその場で脱力、ほっと胸をなで下ろした。
 最後の最後油断していたところを冷や冷やさせやがって。ラファエルと_________それ以上にウリエルに後で言いたいことができた。そう内心で毒づきながらも立派な花火を見ておお、と喜んでいる部下たちを見てまあ、いいかとも思った。

 今頃、ミカエルの方も自分と同じように慌てふためいていることだろうなと内心ほくそ笑みつつ季節外れの花火が咲くクリスマスデーを楽しむガブリエルなのだった。

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