第13話 彼、盲信せず

文字数 244文字

 信じることができるということは、素晴らしいことだろう。

「モノと、お金があれば、幸せになれると信じていた! そんな時代もあったなあ!」と、多くの人が、微笑みながら言える時代が来るだろうか。

 とても具体的だし、とても分かり易い「物」に、捕らわれていた時代。

 それを信じる自己への自問さえ、おざなりにできるほどの、信心があった時代…

「そんな時代、あったんけ?」
 そんな時代を立派に生き抜いた、知和(ちわ)氏が言った、
「おら、知ねえだ。」
 実に生き生きとした、暖かい、接した者を幸せにするような表情で。
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