第1話 もう、いいんだよ

文字数 907文字

 もう、いいんだよ、1日、1日、感染者数に一喜一憂することもないよ。

 どうして。その感染者が、感染を広めるかもしれないんだよ。

 ぼくだって、感染しているかもしれない。無症状なだけで。きみだって、そうだよ。これは、根本的に分からないのさ。どうしてぼくらが生きているのかと、同じことだよ。
 ただし、苦しんでいる人は、助けよう。それだけは、しよう。それは、ウイルスに限った話じゃない。ぼくらにできることは、人さまに迷惑を掛けないようにすることだけさ。広める可能性のある方向へ、加担しないようにするだけさ。
 だから、人の多い所では必ずマスクを付けて、咳もくしゃみも、大きな声も、我慢する。それを続けていくのさ。今できることを、続けるだけさ。

 池田晶子は、老人の増えていくばかりの社会への解決策として、「自殺の権利」を主張したよ。
 少し話は飛ぶけれど、自分で考えて、生きてくことが、いちばん大切なのさ。
 まわりがこうだからとか、政治がどうだとか、そんなもんで生きてるわけじゃないからね。
 コ○ナも、人間も、生きようとしていることには変わりない…
 その生き物の一員として、人間がある。同じ種としての人間として、苦しんでいる人を見るのはつらい。人間にできることは、その苦しい気持ちが分かる人間を、それ以上苦しめないことしかできない。

 だから、わざわざオリンピックして、医療の人たちを苦しめるのは大反対だ。醜い心をもった権力者どもが設置した舞台で、金だの銀だの、ばからしいよ。アスリートは、自分のことしか考えていないとしたら、同類だ。
 
 昔々、為政者が、「自分の政治は民を幸せにしているんだろうか」と不安になって仕方なかったという。で、夜な夜な、彼は変装して、市井の中へ紛れて、それを知ろうとするのさ。
 井戸端にいた主婦に、「今の政治、どう思います?」と彼は訊く。
 主婦は、「さあ…。政治のことなんかより、今を生きるだけで精一杯ですわ」と答える。
 それを聞いて、為政者は、「ああ、そんなに悪い政治をしていなかったんだな」と思う。

 そんなスタンスで、いいんではないかと思う。
 政治によって、簡単に変わってしまう社会こそ、恐ろしいよ。
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