第九章 結婚、お得ですよ!?
文字数 2,748文字
ふざけんなやワレ。なんでうちがバイトせにゃならんねん。ありえへんわ。大体やな、うちは8歳なんや。どこがうちを雇うっちゅーねん。労働基準法第56条の1『使用者は、児童が満15歳に達した日以降の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない』
そりゃ見かけは8歳かもしれないが……たしか遥か昔は豊穣の神でもあったとか言ってたろ? ということは古代には、どこかの地域での信仰の対象だったりもしたわけだろう。本当は3000歳とか5000歳くらいにはなってるんじゃないのか?
はあ? 相変わらずボケとんなぁ小太郎は。ええか、時間が一方通行で進んでいると考えるのは、四次元時空しか認識できない愚劣な人間どもの勝手な思い込みや。まずはオノレら人間どもが虫ケラみたいなものだって悟れや。この宇宙創造と共にうちは存在していたし、未来に形作られた存在とも言える。
いや、男にとって結婚がデメリットばかりなのは事実やで。そこをあえて、無理やりにでも、メリットを捻り出して検討してみようというだけ話や。そうすれば、自ずとどんな相手と結婚すればいいか絞れてくるものやろ?
婚活基本公式⑥ 【男女共通】
結婚することで、いかなるメリットが見出せるのかを検討・追及していけば、どんなタイプの配偶者が自分にとってベストなのかを割り出すことができる。そうすれば、人と違った観点から、埋もれている逸材を発掘することが可能。
◆現実的メリット
・共働きにより、収入のダブルエンジンを確保できる
・共働きにより、いずれか一方の収入が途絶えてもリスクヘッジできる
・収入や資産が多い配偶者を確保し、老後までに至る自分の生活費を配偶者に完全保証させることで、一生働かなくて済む戦略を練ることも可能
・食費や消耗品にかかるコストの圧縮が図れる
・扶養控除を活用することで、社会保障費を圧縮することが可能
・子育てを公明正大に行え、配偶者と助け合うことができる
◆感情面でのメリット
・趣味が合えば、一緒に楽しんだりすることが可能
・話題が合えば、議論したり、旅行したりすることが可能
・配偶者にブランド価値(著名人/プロフェッショナルな職業/一流企業経営者/etc)があると優越感に浸れる
いやしかし、ほとんど全部、わざわざ結婚しなくとも、彼氏彼女で同棲さえしていれば享受できるメリットなんじゃね? せいぜい扶養控除が例外だろうが、これだって大抵は妻が一方的に利益を得られるだけの話であって…………
契約を拒否し続ければ、本当に好きな女に逃げられてしまう危険性があるということか。心から好きだと思える女なら、やはり重い十字架を背負うことになっても、契約することで確保したいと思うのが男というものかもしれない。
男ってのは極めつけに阿呆なものやからな。究極のクズでバカでカスで、生きてる価値も怪しい生き物が男っちゅーもんや。だからしたたかな女の軍門にコロッと屈してしまうのも当然やろう。まあそれでも、単純に収入が一・五倍になって、掛かる消耗品費が30%抑えられるなら、男女ともにメリットが見出せるんちゃう?
俺が年収350万円だとしても、妻が年収250万円なら、世帯年収は600万円になるということか……。家賃や食費も減らせる。しかもナナミの月15万円の小遣い支払いから解放までされるというオマケ付き。な、なんて魅力的なんだ……。主にナナミから解放されるのが途方もない魅力………………
といってもな、子どもを身ごもって産む前後、1~2年程度の期間は、女側の収入が途絶えることは想定しておかなきゃならん。それから女側の会社に育児制度があるかどうか、なければ再就職可能なスキル・能力・意志があるのかどうか、女に仕事復帰の意志がないのなら十分な資産を確保できているかどうか…………さまざまな点を、冷静に見極める必要があるやろうな。
婚活基本公式⑦ 【男女共通】
男はバカ、女はしたたか。
誤解を恐れず非常に単純化した図式ではあるが、この駆け引きがあらゆる男女関係の基本と言える。
どえらい発想の転換もあったものやな。とにかくまずは小太郎の場合、女にたどり着くところからスタートせにゃならん。今日挙げた結婚のメリットを見直し、自分にとってどういう相手が必要かを考え直してみいや。美少女信仰もいい加減にせんと、一生結婚なんかできへんぞ。
美少女か死か――小太郎、魂の叫び!?
次回、小太郎氏、悩みすぎて禿げ上がる!?
第十章へ続く――!