第三章 婚活は電撃戦なんです!?

文字数 1,463文字

悪魔ナナミは回転寿司チェーンで、うず高く皿を積み上げていた。
片や、小太郎の皿は3~4枚。
ぷはー、食った食った。ウニならいくらでも食えるわ。せやけど、上トロも捨てがたいわな。江戸前穴子も3皿は食べたい一品やで。
こんな生活が続けば破産してしまう……
うちの小遣い、月15万やとすぐ足りなくなるかもしれんね。2週間持たないんちゃう? 足りなくなったら即座に補填せえや。
悪魔だ……………………
悪魔やからな。
自宅アパートに帰り着くと、小太郎はナナミの前に跪く。
そしておもむろに土下座する。
ナナミ、お願いだー。手助けの押し売りは結構だから、帰ってもらうことはできないか? このままじゃ破産一直線なんだよ。
帰れやとぉ? ふざけんなやワレ。小太郎が助けを求めてきたんやないかい。それを自分が被害者みたいな言い回ししおってからに。
十分に被害者な気がするが。
うちと小太郎の契約を終わらせる方法は2つある。結婚相手を見つけるか、それとも小太郎が死ぬかの選択や。どっちがええ?
どっちって……実質一つしかないじゃないか。どうなっちまうんだ俺の人生……
だいたいやな、婚活に1年も掛けて一人も可能性のある相手が見つからず、このザマなんやろ。無様やなぁ。死にたいと思わへんの。
たまたま俺に相応しい女がいなかっただけだ。出会う女、出会う女、みーんなアウトオブ眼中なんだよ。それなのに、婚活に身が入るはずがないだろ。
そんな世間知らずな考えじゃ、何年経っても小太郎は結婚できそうにあらへんなぁ……。
半年や。この間に勝負を賭ける。半年のうちに小太郎は結婚することになるやろう。
何!? 本当かナナミ! そうか、ついに悪魔の力を解放する気になったんだな。それでこそ蒼の十字団が呼び出した下僕……。
誰が下僕やボケぇ。小太郎がコツコツ努力するんや。だいたい婚活は、腰を据えてじっくり取り組むもんやない。電撃戦を仕掛けるつもりで一気呵成に臨むのが、成功する婚活の常道ってもんやで。
電撃戦……? だって一生のパートナーなんだぞ。ちゃんと選ばないと……。
『一生の相手だから時間を掛けて……』なんて抜かすヤツは、どうせ結婚なんぞに縁がなく、年齢を重ね、自分の条件を酷く悪化させていくだけや。つまり厳選すればするほど、刻一刻と自分の商品価値が下がっていき、結果的に相手の質が落ちていくという悪循環。この負のスパイラルにハマって婚活難民になる阿呆どもが多すぎる。これぞと思うた相手に出会ったら、即プロポーズするくらいの心持ちでええんや。
婚活基本公式② 【男女共通】

ダラダラ時間を掛けない。やるからには短期決戦の腹づもりで。
実際のところ、条件がほどほど良く、決めようとする意志がある人は1ヶ月で決まる。時間を掛ければ掛けるほど、相手をえり好みしすぎて期間だけが過ぎ、悪循環にはまっていくことになる。
特に、年齢が致命的影響に繋がる女には重要やろうな。
女性が即プロポーズなんて難しいだろう。まだまだ男がプロポーズする側だと思うぞ。
相手にプロポーズをさせやすい雰囲気作りやって大事な戦術や。そういった細かいテクニックも、いずれちゃんと教えたるわ。だいたい、誰一人相手にされてない小太郎にそないな高等戦術を教えたって無意味やろうが。
フッ、蒼の十字団総統の力を理解できる女がいなかっただけだ。悪魔だって呼び出せる偉大な力の持ち主だぞ。
呼び出したオノレが偉大なんやなくて、呼び出されたうちが偉大なんやがな。
結婚は暗黒世界で宇宙の終わり!?
次回、まさかのいきなり婚活講座終了の危機……?

第四章へ続く――!
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登場人物紹介

【大悪魔ナナミ】

ひょんなことから小太郎が呼び出してしまった大悪魔。
マスター小太郎の寿命10年と引き替えに、婚活の成功を引き受けた。
自称、8歳。
自称、豊穣の神として長らく信仰の対象だったことがある。
自称、地球の過去や未来を知り尽くす、人智を越えた鬼神。
自称、森羅万象に精通した宇宙史上最も尊い存在である。

【速水小太郎】

33歳、年収350万、171センチ、体重62キロの婚活難民。
中堅企業に勤める普通のサラリーマンだが、優れた技能を持つわけでもなく将来は危うい。
結婚相手となるべき18歳の美少女(処女)を追い求め、婚活戦場を駆け巡る。
自称、いにしえの歴史を持つ秘密結社『蒼の十字団』総統で、重度の中二病でもある。

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