第六章 少子化で日本滅亡なんです!?

文字数 2,118文字

だがそんなことで男が結婚を拒否しはじめたら、少子高齢化が進んでしまって、国が滅亡するんじゃないか?
それがどうしたっちゅーの? 針のむしろに自分から飛び込んででも国家に貢献しようなんて、殊勝な心がけなんか?
どうしたっていわれたって、何気に重大なことじゃないのか?
そう思うなら勝手にしろや。国家のために子どもを沢山産み育て、養育費をがっつり払って経済成長に貢献し、国の行く末を一人で嘆き悲しんでいるとええよ。そういうマゾで阿呆な生き方も、人生の一つのあり方やろうしな。そもそもからして国家なんて妄想の産物なんやが、まあ好きにするとええよ。
男の結婚を思い留まらせようなんて、なんか社会的に叩かれそうだよな。俺にはとても公言できんよ。
フェミニズムとかいう極左運動がメディア業界や政界で力を持ちすぎたせいで、こういう話を男がしようものなら酷い目に遭うやろうな。男女の微妙な問題に関する意見を男が公言できないことにこそ、本質的な問題があるのかもしれへんね。
ぐむむ…………。しかし人間には、DNAに刻まれた意志があるはずだ。子孫を残したいというな。俺だってそうだ。だから無意識のうちに、ちゃんと結婚して、子どもを残すことが当然だって思い込んでいるぞ。
そりゃ生物なんやから、そうプログラムされてるわな。虫とおんなじや。憐れなもんや。
だったら、リスクの塊だったとしても、やっぱり子どもを産み育てるためにも結婚は必要じゃないか。
本能に屈せず、理性を総動員して、ちょいと冷静に考えてみいや。そもそも自分の子孫を残して何になる? 人間がこれから何千年、何万年、今の姿で存続すると思うたら大間違いやでえ。
そ、そうなん、だろうか…………
2045年を目処に、人工知能が人類の知能を超えるという指摘がある。いわゆるシンギュラリティというヤツや。2060年代や2070年代ころには、世界の姿が変わっておるやろう。過去人類が経験したあらゆる歴史上の物事を凌駕する、巨大なインパクトになるはずや。その地点から先の人間の姿はまるで予想ができへん。
ナナミですらその先の未来はわからないのか?
うちは占い師やないからな。時空を超え、森羅万象に通じておる全知全能なうちやが、実のところシンギュラリティが進んで以降の世界のことはわからんのや。
なんで時空を超えたり森羅万象に通じているのに、わからないことがあるんだよ。
うちの存在は宇宙そのものと言っていい。量子的に言えば、過去から未来へと時間が一方的に流れるという人間の認識は完全なまでに間違っておる。過去も未来も、そして現在も、答えはうちのなかにある。そのうちに見えない地点があるということは…………宇宙がそこで途切れるのかもしれへん。あるいは宇宙が別の形に変容するのか、それとも………………。
ぶっちゃけ、ナナミの今の話が半分もわかってないぞ俺は
小太郎は阿呆やからな。阿呆は阿呆らしく、あんまり深いことは考えず、まあ人間どもの愚かな通念のなかで振り回されて生きるのも悪くはないんやろう。要するに、小太郎は結婚してもええんちゃう?
バカにしてんの?
阿呆に阿呆だと指摘して何が悪い?
婚活基本公式④ 【男性限定、女性厳禁

結婚やめますか、それとも人間やめますか。
そもそも"男"は結婚しないほうがいい。ダメ、絶対。

結婚すると……

◆金銭的に男が圧倒的に不利な契約行為を交わすことになる。何千万円、何億円単位の損失が明らかな契約である。
◆小遣いは、手取りの5~20%になることを覚悟せよ。
◆子ども一人につき、1500~3000万円程度の出費が必要になる。
◆マイホームや車にコストを費やすことが求められる。
◆グローバルな金融危機、日本の財政危機などのリスクが大きく、先行きが不透明。
◆転職や起業などのチャレンジがしにくく、会社に縋り付くような保守的な生き方になってしまいがち。
◆年金を始めとする社会保障全般に期待できないなかで、妻の生活まで含めた老後の計画を考えなくてはならない。
◆仕事をする意志が薄い妻が未だに多く、男性側が支えなくてはならない。
◆現在のような縮小経済の下では、妻や家族を支えるというストレスが多大すぎる。
◆女性は年齢を減るほど劣化してしまう。
◆親戚づきあいなどが増え、男性側の責任が重いという社会通念がある。
◆父権失墜で、子どもに尊重されなかったり、軽蔑されたりする可能性がある。
◆子どもは成人しても、父親のスネを囓ることになる可能性は大きい。
◆家族と暮らす老人のほうが自殺率がかなり高い。独居老人はストレスが少なく、自殺率が低い。
◆日本国における殺人事件の半数は、家族同士の殺し合い。
◆離婚という契約破棄をすれば、金銭的に多大な負担を男が背負わされる。

結婚しなくとも……

◆家電製品の発達により、家事は一人でこなせるようになった。
◆外食産業の発展やおひとり様用食材の流通など、食事に困る可能性は一切ない。
◆風俗産業にも低価格化の波が押し寄せており、自由恋愛のほうが長期的に活用でき、総コストも安く済む。
……そ、そんなバカな…………
それでも小太郎の結婚熱望宣言!?
愛と感動に満ちた壮大なスケールの物語が始まるのか!?

第七章に続く――!
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登場人物紹介

【大悪魔ナナミ】

ひょんなことから小太郎が呼び出してしまった大悪魔。
マスター小太郎の寿命10年と引き替えに、婚活の成功を引き受けた。
自称、8歳。
自称、豊穣の神として長らく信仰の対象だったことがある。
自称、地球の過去や未来を知り尽くす、人智を越えた鬼神。
自称、森羅万象に精通した宇宙史上最も尊い存在である。

【速水小太郎】

33歳、年収350万、171センチ、体重62キロの婚活難民。
中堅企業に勤める普通のサラリーマンだが、優れた技能を持つわけでもなく将来は危うい。
結婚相手となるべき18歳の美少女(処女)を追い求め、婚活戦場を駆け巡る。
自称、いにしえの歴史を持つ秘密結社『蒼の十字団』総統で、重度の中二病でもある。

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