プロローグ 大悪魔ここに降臨!?

文字数 2,247文字

今夜のカップルを発表いたします! 今日はなんと、4組ものカップルが誕生いたしました!
……………………。
まさに連戦連敗――。
俺の何が悪いのか――。
人の本質は闇である。
100戦100敗――これが俺の、王族がつどいし宴(※婚活パーティー)での、罪に抱かれた戦績だ。
1年間に出席パーティー数100、女性1000人以上に出会い、一人の進展もなしという憐れな因果。

今宵は聖なる夜(※クリスマス・イブ)。
未来の俺の思い人よ、君はとても美しい。まるでビーナスのようだ。

今こそ君を救いに行こう。
この俺の左腕に刻まれし薔薇色の十字架と共に――。
――自室アパート。
婚活パーティーから引き上げてきた小太郎は、魔法陣設置にいそしんでいた。
こうなればもう、闇の力に頼るしかあるまい……。見せてやろう、この俺が本気を出した真の姿を……! 3003回目の召還術式、ここに発動!
魔方陣、設置よし!
我が名は速水小太郎――由緒ある蒼の十字団総統にして、この世に君臨すべき器を持った男だ。我は命ずる。我が后に相応しい美少女を降臨せしめよ!
クソッ……何も起こらん……。今回もまたダメなのか……?
…………………………。
………………寝よう。
そして翌朝のこと――。
コラ、速水小太郎! いつまで待たせるんや! 早く起きろド阿呆!
痛!


…………………………ファッ?
おはようさん、うちはナナミや。小太郎の願い、一つだけ叶えたる。その代わり、ジブンの寿命10年と、この世界にいる間は毎月15万円の生活費をもらうことにしよう。
不法侵入?
しかし、カギは掛けたはず……。
メチャメチャ可愛い幼女が俺の部屋にいるわけがない。
まずはカネや。うちかてメシ食わんとアカンし、漫喫とかヒトカラとかで暇潰しもしたいからな。
……これ財布か?

なんやねん、4000円しか入ってないやんかあ! この最悪の貧乏人が! 高貴なうちを呼び出しといて、これしか貢ぎ物を用意しとらんなんて腹立つわぁ~。
ええと、あの……。
まぁええ。とりあえず4000円全部もらっとくから、今日中に銀行からカネ降ろしときや。今月分の残り、14万6000円やで。
俺のカネ! なんてことをしてくれるんだ、返せ!
返せやと? 小太郎がうちを呼び出したんやろうが。何様のつもりやこのド阿呆。
え? 呼び出した……?
后を求めるとか何とか抜かしとったやないかい。うちはオノレが呼び出した悪魔ナナミや。はるか昔は、豊穣の神として信仰されていたこともある。すさまじすぎる力を持った偉大な悪魔やねん。
ま、まさか……。悪魔召還が成功していた、のか……? 今まで3000回以上も試してきて、初めてだぞ、こんなこと……?
アホ面やなぁ。小太郎の不抜けた顔見るだけで腹立ってくるわホンマに。
………………はは……はははははは! 3003回目の術式でついに……そうか、そいういうことか! そういうことだったのか!
苦節33年、俺はついに悪魔を使役したぞ! 悪魔ナナミと言ったな? 我が秘密結社『蒼の十字団』の願いを叶えよ! 世界を我が手に! 世界中の美女をここに集わせよ!
待てや、蒼の十字団って何やねん。うちは小太郎に呼び出されたんであって、どこぞ秘密結社の儀式で降臨したつもりはないで。
フッ、蒼の十字団のことを聞きたいか。いいだろう、教えてやる。
なっ、なんやのん、急に偉そうにしおってからに……。
蒼の十字団の歴史は古く、その創設から20年の歳月が経っている。今の本部はこの部屋だ。
ちっとも古くないやんか。本部がこないなワンルームで、他にどないな団員がおるんや?


…………ちゅーか、地味なワンルームに暮らしといて、照明が豪壮なシャンデリア……このセンス激ヤバすぎやわ……。
団員は……残念だがこの20年間いたことがない。いずれ蒼の十字団には数万人規模が馳せ参じる予定だが。
一人秘密結社やないかーい! 今33歳なんやろ? ちゅーことは中学生のころに作った一人秘密結社なんか。痛たたたた……。ツッコミどころ多すぎて、うちもどうしていいかわからんわ。そら結婚でけへんわな。
結婚――そうだ、結婚だよ。俺は今、相応しい結婚相手を探してる。悪魔の力を使って、世界で一番美しい女を俺の前に降臨させてくれないか。できうれば18歳、百歩譲って23歳までだ。身長は152~165センチの範囲内、体重は49キロ未満。ウェスト58センチまで。バストはCカップ以上……ぐむむ、できればEカップ……Fカップあればベストだ。それから、多少の教養とコミュニケーションスキルもあってくれるとありがたいな。料理の腕前はそこそこで十分だが、俺に献身的に尽くしてくれる女性であることが必要だ。
死ねやボケ。地獄に堕ちろやド畜生。己のすべてを棚に上げて、なに好き放題抜かしとんねん。
ナナミは俺が呼び出した悪魔だろ。だったら、俺の望みを叶えてくれよ。すさまじい力を持ってるとか語ってたじゃないか。
小太郎が途中で諦めたりしなければ、望みは必ず叶えたる。オノレの結婚、叶った暁には寿命10年もらうで。すでに契約済みだから撤回はでけへん。
最高の女性と結婚できるなら、寿命の10年くらいがなんぼのもんだよ。どうせ俺が老後を迎えたころの10年なんて、超少子高齢化真っ直中のこの日本じゃ、まともな暮らしなんかできないだろうからな。
それならええ。必ずや、うちが小太郎を結婚させたる。大船に乗ったつもりで構えときや。
次回、ついに始まる、悪魔ナナミの逆ギレ婚活講座!
マスター小太郎の運命やいかに!?

第一章へ続く――!
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登場人物紹介

【大悪魔ナナミ】

ひょんなことから小太郎が呼び出してしまった大悪魔。
マスター小太郎の寿命10年と引き替えに、婚活の成功を引き受けた。
自称、8歳。
自称、豊穣の神として長らく信仰の対象だったことがある。
自称、地球の過去や未来を知り尽くす、人智を越えた鬼神。
自称、森羅万象に精通した宇宙史上最も尊い存在である。

【速水小太郎】

33歳、年収350万、171センチ、体重62キロの婚活難民。
中堅企業に勤める普通のサラリーマンだが、優れた技能を持つわけでもなく将来は危うい。
結婚相手となるべき18歳の美少女(処女)を追い求め、婚活戦場を駆け巡る。
自称、いにしえの歴史を持つ秘密結社『蒼の十字団』総統で、重度の中二病でもある。

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