第四章 結婚は呪いの契約か!?

文字数 1,721文字

小太郎はこれからいよいよ本格的に婚活世界に攻め入っていくことになる。最初だけに、まずは結婚というシロモノの真実について教えてやろう。
なるほど、結婚の素晴らしさを説くんだな? 俺のハーレムが極上でないわけがない!
逆や。男は結婚しないほうがええ。やめとき。
…………………………………………は?
極論すれば結婚とは、配偶者が自分の稼ぎや貯蓄の半分を法的に奪うことができる契約や。この意味を、一歩立ち止まり、深ーくかみしめて考えてみることや。
婚活基本公式③ 【男女共通】

結婚 = 配偶者が自分の稼ぎや貯蓄の半分を法的に奪うことができる契約
そんなバカな……? 結婚は、そんなに単純なものじゃないはずだ。助け合ったり、子どもを作ったり、愛し合ったり……
生涯本当に愛し合うてる夫婦なんてな、歴史上のあらゆる国と地域において、どんな社会階層の人間であっても、5%以下だと断言できる。95%の夫婦は、早い段階で相手に愛想を尽かして仮面夫婦になったり、人生のどこかで大きく躓いて愛情を無くしてしまうもんや。そんな夫婦を繋げているのは、子どもの存在や世間体、わざわざ別れる作業が面倒だという怠惰や惰性、そして慣性の法則みたいなもんなんやで。そして最後に残る本質が、結婚という契約の側面や。
結婚は契約……?
誰がどうみたって契約やろうが。聖職者の前で何を誓い合う思うとんねん。
そんな視点で考えてこなかった…………
実際に結婚は、人生最大の契約行為だと言えるやろうな。ちゃーんと公的に書類が保存され、ありとあらゆる権利関係がガチガチに発生してしまう。
マイホームを買うとか、車を買うとか、そんなチャチな次元じゃない……? 急に結婚が恐ろしくなってきたんだが………………
つまりや、結婚が契約だとするなら、婚活は自分自身という商品を売りつける行為でもあるわけやな。嘘にならない範囲で可能な限り自分を大きく見せ、相手の話に同調し、喜ばせ、楽しませ、泣き落とし、ときには恫喝まで交えつつ、全力で契約を勝ち取ろうとする行為なわけや。しかも売り込む商品には、3億円とか、8000万円とか、人によっては20億円なんて値札が付いておる。そりゃあ簡単には買えんで。
じゃあ男が結婚しないほうがいいっていうのは、どういう事情だ? 男も女も同様に契約は交わすわけだし、損を引き受けるのは一方だけじゃないだろう。
山のように理由を提示できるが、最もシンプルなところからいこか。これを見いや。男と女の年収の平均や。
男女の平均給与
出典:国税庁『民間給与実態調査』
https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/minkan2013/pdf/001.pdf
生涯における男性の平均給与は511万円、そして女性は272万円……。全然違うじゃないか…………
これは数字以上に強烈やぞ。現代社会で人一人が普通に生きていくためには、家賃、食費、通信費、水道光熱費、交際費、税金、年金なんかで、どうしたって250万くらいのコストは掛かるもんや。その固定コストを引いた分が、その人間の余裕となる。
男性のほうは一人260万くらいの余裕があるのに、女性のほうは生き残るだけでもカツカツ……。それに化粧とか服、ランチ代やスイーツ代で、生活コストはどうしたって女性のほうが高くなり気味だ。わかっていたことだが、こうして見せられるとショッキングだな……。どうりで、貧困女子なんてニュースになるわけだ。
男は最悪、ホームレスやって生きていけるやろ。せやけど女は、容易にそういう道を選び取ることも叶わんもんや。尤も、腹の据わりようは男女逆で、男はいつも女々しくて、女はいったんこれと決めたらテコでも動かないところがあるんやけどな。
だいたい、俺を結婚させるために降臨してきたはずのナナミが、結婚を正面から否定してどうするんだよぉ! やる気が削がれるどころの話じゃねーぞ!
ボケが。結婚の本質を知らずして、まともな結婚ができるはずないやろうが。まだまだ続くで。結婚という暗黒の側面を、嫌というほど味わわせてやるわ!
次回、まさかの男は結婚するな宣言!?
いきなり婚活講座終了なのか――!?

第五章へ続く――!
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登場人物紹介

【大悪魔ナナミ】

ひょんなことから小太郎が呼び出してしまった大悪魔。
マスター小太郎の寿命10年と引き替えに、婚活の成功を引き受けた。
自称、8歳。
自称、豊穣の神として長らく信仰の対象だったことがある。
自称、地球の過去や未来を知り尽くす、人智を越えた鬼神。
自称、森羅万象に精通した宇宙史上最も尊い存在である。

【速水小太郎】

33歳、年収350万、171センチ、体重62キロの婚活難民。
中堅企業に勤める普通のサラリーマンだが、優れた技能を持つわけでもなく将来は危うい。
結婚相手となるべき18歳の美少女(処女)を追い求め、婚活戦場を駆け巡る。
自称、いにしえの歴史を持つ秘密結社『蒼の十字団』総統で、重度の中二病でもある。

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