第43話

文字数 2,057文字

 決戦の火蓋が切られた。僕らの部隊は、最後尾からの出撃となる。

 スターピープル4頭がYUUKIのスピードに合わせて、ゆっくりと前進する。

 ダダダダダ。

 周りの部隊も最高速で一気に駆けだしていく。一度に百人以上の突撃は珍しい。その戦場の景色はどこか恐ろしくもあり、爽快だった。

 最前列の部隊が、敵の先遣隊と衝突したらしい。前方で掛け声が聞こえる。円卓の騎士は、防御の陣形に優れたギルドとして名を馳せている。何度も戦った経験者として、言わせて貰うが、前方の戦士職で固められた数十名の盾部隊。そして、そのすぐ後方で構えるエリート弓矢部隊。最後尾で居を構える最強の魔法部隊と回復を務める精霊部隊の立ち位置は見事なものだ。

 この鉄壁の陣形を破ったギルドは過去一度もないとされている。

 音沙汰が無くなってからしばらく時間が経過する。

 やがて、相手の盾部隊すら打ち崩せずに部隊が全滅したという報告が入った。

 SKY「なんてことだ」

 YUUKI「この展開は最悪だな」

 高LVプレイヤーで固められた、盾部隊は防御力に優れていたとは聞いていたが、ここまでとは……僕は幾度となく戦いを交えた相手として、武者震いが出る。本当にこのメンバーに勝てる日はやってくるのだろうか。

 SIZUK「うちもうかうかしてられないよ。とりあえず、最前線に行ってみようよ」

 SKY「いや、部隊が回復するまで、あの丘に行ってみよう。とりあえず拠点を手に入れるんだ」

 僕が指さした場所は、山なりの形をした丘だった。そこのすぐ近くにある砦を占拠すれば、いい目くらましになるだろう。

 SKY「この状況では、あまり良い策は考えられないけれど、それしかない。みんな付いてきて!」

 Dan「らじゃー」

 TIBI「OK!」

 SIZUK「了解!」

 スターピープルがうなり声を挙げる。僕らは、戦場MAPを見ながら進んでいく。

 やがて、遠くに小さな砦が見えて来た。

 SKY「あの砦の前の丘を占領します。そこでなら時間稼ぎができると思うから、そこで今回は、部隊が集結するまで、待機していよう」

 丘を占領したあと、砦を守っていたのは、低レベルプレイヤーだった。僕らはそれを蹴散らし、砦を無事手に入れた。

 砦から見渡す景色は、圧巻だった。総勢370名が駆け回る戦場は、本物の戦争にも見える。僕は少し感動してしまった。

 YUUKI「ここでしばらく待とう。相手を引きつけられれば良いけれど。今回は勝つのは難しいかも知れないな」

 SKY「うん、やられてばっかりでモチベが下がるけど仕方ないね。今回はここで見学かな」
 
 SIZUK「そんなのSKYらしくない!」

 えっ?

 SIZUK「SKYだったら、どんな時でも勝利を諦めない。情けないよ。だから、みんなと一緒に戦場に行こうよ!」

 僕は黙ってしまった。そうか……僕はどこかで、この戦力差に諦めてしまっていたのかな。

 沈黙の後……僕は決心した。

 SKY「分かった! やるだけやってみよう。砦を手に入れたばかりで悪いけれど、みんなと一緒に突撃してみよう!」

 YUUKI「OK! それでこそSKYだ」

 部隊は道を引き返し、スタート地点へと戻った。

 スタート地点でみんなの部隊と合流した僕らは、陣形を整え、もう一度フォーメーションを考えていた。短い時間での作戦会議が始まる。

 SKY「あのさ……この前、漫画で見たんだけれどさ」

 HAKUAI「うん、何? SKYくん」

 SKY「あの軍神、上杉謙信も使った、無敵のフォーメーションってのがあるんだ。今回、それを試してみたいんだけれど……だめかな?」

 HAKUAI「いいよ。詳しく言ってみて」

 SKY「ありがとう」

 僕が考えるフォーメーションというのはこうだ。まず前列に遠距離魔法が使える部隊で固め、すぐその後ろで弓矢部隊を並べる。中央で中距離攻撃が出来る槍の戦士職と、最後方に一気に接近して近距離攻撃を行える騎馬隊で固める斬新なものだった。

 これは、戦国時代の村上義清が上杉謙信に教えた必殺の陣形に似ているのだが、最前列に鉄砲隊で固める。前列に弓矢部隊。中央に槍兵に最後尾から騎馬隊で編成されたフォーメーションだ。一見、何を考えているのか分からない陣形なのだが、上杉謙信がこの陣形を使うと負けたことが無かったらしいのだ。提案した理由は、あの軍神が使ったから……という理由しかなかったのだが、有名な車懸かりの陣と合わせて、このフォーメーションを使うと無敵に近かった。

 多分、最前列に鉄砲隊を使うことでいきなり相手の士気を挫いたのだろう。相手と距離を取ることで、兵力の浪費を防いだのかも知れない。僕は今回、このフォーメーションを提案してみた。

 HAKUAI「なるほどね……よく分かりました」

 何かに納得した様子のHAKUAIちゃんは、同盟員に作戦内容を伝える。

 HAKUAI「今回は、このSKYくんが提案した陣形を採用してみます! みんな……SKYくんの言うとおりに陣形を組んでみて!」

 一同「「アイアイサー」」
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