第40話

文字数 1,306文字

 人生についての考え事をして、勉強を終わらせた僕は、スマホのLINEをチェックした。

 メッセージが入っている。

「未来、久しぶり。あれから勉強は進んでいるかい? こっちは、ゲームクリエイターについて、色々と調べてる。また仏心やろうな!」

 返信せずにアプリを閉じようとしたら、追伸が入っていることに気づいた。

「PS……そうそう、また近いうちに戦争やるらしいぜ」

 久しぶりに参加しようかなあ。狩りでもして、感覚を取り戻しておくか。

 僕は、仏心にアクセスをした。

 円卓の騎士は、流石最強ギルドということだけあって、一筋縄ではいかない。

 ランキング三位の同盟、白蛇の大地と手を結んでも全敗するほどだ。

 ギルド王者としての、貫禄が備わっている。本当に勝てる日はやってくるのだろうか。

 フィールドを歩いていると、円卓の騎士のメンバーとすれ違った。

 肩身の狭い思いだ。悔しいなあ、何とか一勝でも挙げることが出来れば、見返してやれるんだけどなあ。

 いつも変わらない、街並みだけれど、プレイヤーの様子は変わっていく。

 NPCと違って、プレイヤーの心は分からないはずなんだけどな……みんな、心で繋がっているんだろうか。いつも不思議に思う。

 でも、現実とは違った世界に逃げ込めるのはいいことだ。それが例えゲームだとしても。

 やっぱり、ゲームを舐めてちゃいけないな……。プレイヤーみんなも本気なんだ。制作側も頑張らないといけないなあ。

 まだ、なった訳ではないんだけれどね。

 思わずリアルで苦笑が出る。

 ギルド本部に着くと、数人程のメンバーが集まっている。

 LAVI「SKYくん、お久しぶりです。珍しいですね。会議に出席してくれるんですか?」

 LAVI「そうそう、戦争が近いですよ」

 SKY「はい、勉強ばかりやっていたけれど、ちょっと息抜きに。戦争の件は知っています。参加する予定なので宜しくお願い致します」

 LAVI「了解しました。では、戦争に参加するなら会議に出てくれると有り難いのですが」

 SKY「分かりました」

 詳しく聞くと、会議は今日の夜に開催されるらしい。今のうちに寝ておこうか。

 しばらく会議に出て居なかったから、緊張する。今回はどの様な内容になるのか。

 僕はそこで仏心からログアウトした。

 現実世界に帰還すると、お母さんがニコニコとした表情でこちらを見ていた。

「未来、ゲームをやっているの? 勉強も良いけれど、気分転換もきちんとしなさいね」

 あのお母さんがこんなことを言うとは珍しい……。熱でもあるんだろうか?

「どうして、急にゲームをやれなんて言うのさ?」

「だって、未来はゲームクリエイターになるんでしょう? 研究の為に、やっておいた方がいいと思ったのよ。あなた、最近ゲームを全然やっていなかったじゃない」

 なるほど……心境の変化という奴だろうか。お母さんの言うとおり、二年生になってゲームから離れていたけれど、たまにはアクセスしないとだな。

「お母さん、気を遣ってくれてありがとう」

「うん、分かればいいのよ」

 お母さんは満足げにしている。テーブルにホットミルクが用意されていた。僕はそれを飲み干すと、落ち着いた気分になった。
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