第39話

文字数 1,527文字

  ――。

 季節は変わり、僕らは二年生になった。

 思えば去年は大変なことがあった。

 サマージャンボで、100万円が当たったこと。そのお金を全部ガチャにつぎ込み、最強キャラを作ったこと。

 思えばとんでもないことをした。でもそのお陰で、あの地味だったクラスでの立ち位置から一転、目立つことができた。

 仏心は、あれから勉強の為にあまりアクセスすることはなくなった。とは言っても、一日一時間のプレイは欠かすことはなかったが。戦争は同盟システムが実装されてから、ランキング一位のギルドしか相手にしなかった為か、それ以降の結果は全敗だった。

 その為か、クラスでのゲームのモチベーションは明らかに低下しており、積極的にプレイするクラスメイトは減った。

 ゲームクリエイターになりたいという僕の夢は、着々と構想が出来上がっていた。

 未来が少しでも見えると人間、思いも寄らぬ力を発揮できる。

 夢の為に、全力で勉強に打ち込めている僕がそこに居たのだ。

 プログラム関係の本を買って、自分で簡単なプログラミングをしてみたり、ゲームシナリオの為に読書もたくさんした。

 僕は、まだゲームプランナーか、シナリオライターのどちらかにするかはまだ決めかねていたが、広範囲に渡る知識を吸収していた。仏心のプレイ時間が、ゲームクリエイターになる為への時間に消えていった。

 だが、これはこれで、有意義な時間の使い方なのだ。ゲームはやはり一日一時間。高橋名人の言ったことは間違ってはいなかった。

 僕は、どうせ就職するなら大手に入りたかったので、勉強をものすごく頑張った。

 専門学校に入る手もあったが、有名な大学に入った方が大手には入りやすい。

 大体、真面目に専門学校に通っていれば、ゲーム業界への就職もやりやすいのだろうが、それには果たして、その中でトップクラスになる必要がある。

 それよりは大学に入って、独学で勉強した方がいいだろうと考えた。

 まず、あの親が専門学校に入ることを許してくれるとは思えなかったのも理由だ。

 僕は数学が得意だったので、プログラミング関係にはもってこいだったのもある。後は国語力も磨いて、シナリオの分野も視野に入れるつもりだった。

 何が自分に向いているか分からない。この時期、選択肢は多いに越したことはない。その為、受験の為に、予備校に通う日々が続いた。

 自分が、ゲームクリエターになりたかったということを見つけられたのもそうだが、僕がもう一つ驚いたことがある。

 なんとある日、悠木も同じ職業になると言い出したのだ。

 勉強のモチベが上がった理由の一つである。もう一つは恋愛を諦めたことで吹っ切れたのか、勉強に打ち込むことに専念できたのだ。これが功を奏したのか、いつの間にか僕の成績はぐんぐんと上がっていった。 

 余計な部活や、遊ぶことを辞めたことで、自分でもつまらない人生だなと思う日もあったのだが、そもそも人生というのは、基本つまらないものなのだ。

 高校生にしては、僕は割と悟った方で、人生というものに対して非常に淡泊に考えられていた。

 僕は元々、公務員を目指していたのもあって、僕みたいなタイプはきっと日本に多いのだと思う。

 未来が見えているというのは、まるで超能力者にでもなった気分だ。この先の展開が分かってしまうのだから、これはとても気分がいい。

 自分探しの旅に出て、夢を探してみるというのもたまにはいいのかも知れない。

 人生のレールから外れなかった人は、折角の人生をエンジョイすることだ。それでも、どうしても外れてしまった人は特別な道が用意されている。そう信じるのだ。

 どうせつまらない人生だ。

 つまらないことを面白いと思える人生にしていくことが大事なのだ。
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