#11 約束
文字数 3,046文字
場所は、駅の南口で。
きのうと同じように早めに着くと、まぶしい日差しのなか、ペットボトルを片手に空を見上げている沢木くんの姿があった。
いつもとなんら変わりない、沢木くんの笑顔。
気をつかって、いつも通りに振る舞ってくれるのはわかるんだけど……。
気をつかって、いつも通りに振る舞ってくれるのはわかるんだけど……。
言わなきゃ、今っ!
私が話を切り出すと同時に、沢木くんがバッと頭を下げた。
駅のロータリーにバスが入ってくると、沢木くんが私の手を握って走り出した。
沢木くんのペースに、完全に流されちゃってる。
こーゆーときに反則だよ。
まぶしすぎる笑顔を私に向けないで。
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最後に行ったのは、いつだろう。
小学校の遠足以来かな。
なつかしいなぁ、了と二人して水槽にべったりくっついてたっけ……。
丸い窓が並ぶ遊歩道ゾーンを歩いていると、ツノダシの大群がサーッと通過する。
思わず心を奪われ、まるで子供のように目をキラキラとさせる私。
沢木くんに手を引かれ、奥の水槽へと導かれる。
足を踏み入れた途端、そこはまるで海の底にいるような神秘的な世界だった。
足を踏み入れた途端、そこはまるで海の底にいるような神秘的な世界だった。
言葉にできないほどの迫力さ。
自分の頭から足の下を華麗に泳ぐ、たくさんのエイ。
自分の頭から足の下を華麗に泳ぐ、たくさんのエイ。
心がざわつく。
一瞬、私のまわりから音が消えたかのように、そのエイを見に来たカップルたちの笑う映像が頭の中に流れ込む。
私、これ以上進めないっ‼
一瞬、私のまわりから音が消えたかのように、そのエイを見に来たカップルたちの笑う映像が頭の中に流れ込む。
私、これ以上進めないっ‼
ギュッと拳を握りしめ、沢木くんに深く頭を下げた。
まっすぐ見つめる沢木くんの瞳に、思わず息をのむ。
沢木くんの手が伸びてくる。
思わず、ビクッと体を震わせると、伸びてきた手が私の髪をすくい、あらわになった耳に強い視線が向けられる。
そう答えるのがいっぱいいっぱいで、沢木くんの見つめる瞳から、思わず目をそらしてしまった。
沢木くんは深いため息をつくと、私をその場に残し、一人でその先をとぼとぼと歩いて行く。
……沢木くん。
……沢木くん。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ザ──────ッ!!
駅に着いた頃には、どしゃ降りの雨になっていた。
ちょうど目も腫れてるし、別に構わない。
おととい買ったばかりの花柄のワンピ―スが
去っていく沢木くんの後ろ姿が、どうしても頭から離れられなかった。
……ごめんね。
そして、ありがとう。
突然、どこからか、了の声が聞こえてきた。
ピシャ、ピシャ!
水たまりの跳ねる音がだんだんと大きくなってくる。
もやがかかった街の中を、了が息を切らせながら駆けてきた。
まるで夢でも見ているかのように、目の前に了がいる。
……了────!
ピシャピシャと音をたてて、了の胸に飛びつく。
ピシャピシャと音をたてて、了の胸に飛びつく。
ニコッと笑う私に、じーっと胸元を見る了。
ん?
────あ……。
ん?
────あ……。
了の頬を殴った後、ぬれて透けた胸元を両手でバッと隠す私。
絶対言ってやんない。
絶対言ってやんないから!
了のことが“好き”だって。
絶対言ってやんない。
絶対言ってやんないから!
了のことが“好き”だって。
顔を赤くして、プイッと横を向く私に────。
言いかける私の口をふさぐかのように、了の唇と重なる。
────優しい……キス……。
────優しい……キス……。
え?
まさか……。
まさか……。
5年前のあの約束っ!!
はっと、了を見上げたときには、私を包み込むような優しい目で見つめていた。
その目に吸い込まれるように、私も了を見つめ返していた。
はっと、了を見上げたときには、私を包み込むような優しい目で見つめていた。
その目に吸い込まれるように、私も了を見つめ返していた。
了の服の裾をギュッとつかみながら、自分の気持ちを伝えると、そこには私以上に顔を真っ赤に染めた了がいた。
了にグッと引き寄せられ、次の瞬間、私を待っていたのは、キスの嵐だった。