第15話

文字数 847文字

また受験生だ。
3年間なんてあっという間だな。
僕は中高一貫の学校だから、受験は無い。けど一応世の中的には受験生だから、受験生なんだなと思うことが多々ある。ふと、あいつのことが頭に浮かんだ。1,2年生と同じクラスで友達と親友の間くらいの関係だったあいつ。席が隣同士になってから話すようになったけど、あいつは国語や英語が得意で一方のオレは数学や物理が得意で、あいつは趣味が読書、オレは趣味というものが無い。あいつはいつも一人で本を読んでいるような内気なタイプで、オレはなんとはなしにボーッと友達だか知り合いだかぐらいのクラスメイトの話を聞いているようなタイプだ。要するにお互いまったく繋がりがあるような感じではなかった。強いて言えば、天の遊びでクラスでただ一つの男子同士が隣になる席をクジで引いたのが繋がりと言えるのだろうか。
 あいつは転勤が多く、中学2年生までにすでに5回も転勤してたらしい。しかし、中学3年間は同じ場所に住むことが確定したため、この学校に来たらしい。結果的には3年生が始まる前に転勤してしまったが、、、
 クラスの中で友達という友達がいなかったから、クラスのお別れ会は静かなものだった。お別れ会後、僕らは二人で下校することにした。たわいもない、それでいて心のどこかが黒い穴になったようなそんな気持ちだった。その時に僕は「あぁ、これが別れなんだ」と思った。これまでにも卒業式だとか、卒園式だとか、何かと別れを惜しむ的な催し物はあったが、別に気持ちが動くことが無かった。あいつとの別れは少し違った。なにがこれまでと違うのだろう。居心地が良かった。あいつの話し方が気に入っていた。性格が良かった。どれも当てはまる。しかし、僕らは二年間という短い友達であった。これから会うことは無いだろう。僕もあいつも携帯は持ってないし、住所も分からない。なぜ聞かなかったのか。なぜ言わなかったのか。恥ずかしかったのかな。まだまだ子供なんだなと僕はその時に思った。
「さよなら」「バイバイ」それが別れだった。
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