文字数 2,459文字

目の前に広がる 世界が変わる音がする
凛とした声を 聴いた時に 何かに震える
君の声は 甲高い声とは 真逆で 「初めまして」と 呪文のように 効力があった。
気づくと いつも遅いだけで 
十年間の記憶を繰り返して いつか消える。
壊れた欠片を 取り戻すように。

“本当に別れたかったら初めましてと言えば“
“相手を存在しないことに出来るんだよ“

僕は古い記憶からそれを取った。
朝起きて、はじめにしたことだった。
ベットの窓際と目覚まし時計
明け方の香りがする自分の部屋。
使わないメールアドレス

この頃は 覚悟をしないと
過去と向き合えないのだと
死へ簡単に挨拶をする様に、
“ヒショク“の服を身に纏って準備をした。
過去に取り憑かれたら、時間は戻らない
でもその貴重な時間を無駄遣いしたのは
ぼくだったのだと 勘違いをした。





“秘色徒爾“

「無駄になることだよ。」
「なにが無駄なの?」
「全てかなぁ。頑張ったことや焦がれたことも
何もかもが、無意味になるってことだよ。」
「どうして?」
「それが私の視界で世界だから。君のこと……」

“君のこと“


秘色のコートを纏って 停留所で待っている。

今は午前七時過ぎだ。

君は からの文章を読むのを辞めれなかった。
アドレスからの返信は来た。
文脈的に あなたとは感じとれない。

灰色の少女の靴のサイズを探し回るなら

彼女では無いと思ったから
あの時に彼女が秘色徒爾と言った真意を
聞こうとしたかった。

でも僕は其れを果てに置いてけるほどに
どうでもいい振りをすると
その子に言われた。

どういう意味かも理解せず。

数年振りに帰省しようとしている。
バスが、やって来る。
こちら側から、覗き込んだ。
手に持った荷物を纏めると、

バスは止まる。
車体に映る事といえば
皮肉にもこの色のコートだけだ。

僕はそれに対して 少しだけ微笑みを浮かべて
乗車した。

青色のシートの座席に座る。
少しだけ自分を、律した。
いまの精神力だけだと
そこらじゅうに溢れてる色は悲しかった。

“なんでわたしのそばにいてくれないの“

あぁそうかと、また微笑む。

手に持つ画面は
あの子とだけ書かれている。


「あの子。」
僕は それに対して 「なんだったんですか。」と
送ることにした。
十分か、
十五分後くらいに
「あの子は…君のことを青色が良く似合う…」
あおいろ。
“あおいろね“
「綺麗な人だと言っていたよ。」
口元で囁くように
「綺麗…か」 と僕は発した。
耐えることの無い涙を、
言葉には出来ない美しさを
知ったつもりだったから
綺麗という言葉がどれ程の美しさで、
どんな形状で、どんな意味なのかをわかってるはずだった。

でもきっと僕には分からない。

世間的に不自由なあの子を、
見るのを諦めてしまった。


駅に到着した。
寒いホームの中で
電車を今度は、待つ。

はぁと呼吸を吐くと
白く煙る 両手の中で
袖の青色は少女を思い出させる。

「千鶴」
ちづると呼ぶのを、躊躇わなくなった。
「あの子は、病弱なのよ、」
と、母親に言われるあの頃から
「唯の世界には千鶴君しか居なかった。」
とまた母親と称する人から言われた時から、
僕は秘密を知った。
対価を知ったあの日から
彼女に対して勝手に罪を感じ取ったのだろう。

それは錘になって
何方かが傾けば、
ずっと、傾いたまま。
戻せないことを
その頃は知らなかった。


電車が来る。
バスとは違う風景に乗り換える。

二時間掛かる地元まで
僕は本を読むことにした。
携帯は、いつもその文章のせいで
重たく感じた。
消そうにも消せずに
読書に耽る。

ちらほらと記憶が蘇った。
「青色の雨模様が好き。青色が好き。あなたの心だと勘違いをしてあなたを葬るこの手が好き。」
遠い昔に貸した本で、その場面が好きだと
言われたのを思い出した。

たったいま読んでいる本はその著者では無い。
ただの気分で持っている本だった。

RUIがサナダを手に掛ける場面と重ねて
「千鶴は青色が良く似合うね。この人と似ているね。」

「青色か。」何度目かの独り言だった。

僕は少し眠ることにした。
持っている本を閉じて
到着するまで、睡眠を取る事にした。

「千鶴、知っている?はじめましては。私は何かと触れ合う言葉だったの。転校初日のはじめましてや、誰かとの別れ際のはじめまして、本当に初めて会う時のはじめましても含めて。」

沈黙する夢の中。
「私はこの中で嫌いなのが一つだけあるの。」
……
目を覚ました。

はぁ、はぁ。
今どこら辺だろうか。

後は二駅だ。
「良かった。寝過ごさなくて。」

携帯を見ることにした。

「君は……か。」
照れる様な笑いを零す
鬱みたいな。
嘘と、その場を乗切る為だけの。


目的地に到着を致しましたと
アナウンスが鳴る。
荷物を抱えて電車から降りる。



よく見慣れた風景を思い出した。
その言葉が懐かしい。

君に合う色だね、青色が好きなんでしょ。

「もう言うも愚かな年齢だね。」

葬りたいだけの記憶と嘘であって欲しい景色が
僕を少しだけ殺した。

実家に到着した。
チャイムを鳴らす
「お疲れ様。」と母親が出る。
「ただいま。」と僕は喋る。

視線先の青色の建物が
ずっと青だったと教えてくれている。
母親は様子を伺ってる。
「……安心して、もうこの土地にはいないから。」
「知ってるよ。」と僕は喋る。
「そう。」と砕く。

二階へ行って荷物を置いてきなと
母親は言った。
「……わかった。」

きしきしと音の鳴る劣化した家と
向こう側の青色は似てる気がした。

自分の部屋に一枚だけ
目立つように置かれた手紙は、
封が切られてなかった。
封を切らなかったのかは、覚えてなかった。
勘繰るという悪い癖が出る。
メールを読み返した。


「君は何時も通りだった。嘘を許せないし。余り喋らないし、君のことを、応援しているから。」
手紙の封を切る?
勇気がいる作業だ。

僕は此処から逃げることしか出来なかった。

「君の事が大嫌いだよ。なんで、私を置いてゆくの。一緒に歩いてくれないの。どうして、あれ程に似合う色を、捨ててしまうの。」
涙のあとが落ちていた。

ちらと蘇る。
本当に別れたいのなら、初めましてと言えばいいの。どんなに知っている相手でも
存在しないことに出来るから。
「ああ、そうだよね、はじめまして。」
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