第5話  北海道旭川市北方野草園にて2

文字数 1,237文字

休日自然観察者の手記2
北海道旭川市北方野草園にて2

雪の解けている道を歩く。沢沿いの湿地に、うす紅いろの細長いつぼみが茎の上にたち あがっているのが見えた。葉は丸く地面に広がっており、黒い斑点が特徴的である。これ はもしかしたらカタクリというものではないか。名前に良く聞く山野草。あのカタクリ粉 のカタクリであるが、いまではどこでも減ってしまい、カタクリ粉にするために根を掘り 取ることなど、ご法度である。ちなみにカタクリ粉は今では他のイモのデンプンで作って いる。

良くみると、斜面ぞいに群生している。みなつぼみの状態である。図鑑で葉と花を確認 すると、間違いない。ふしぎな感動があった。というのも、図鑑で種名を自信をもって特 定できるものは、そう多くないからで、それはとりもなおさず、この植物がかなり特徴的 だからである。

入り口をまっすぐ上った沢の中に、黒紫色の植物がたくさん突き出ていた。これはなん だと妻に言うと、玉葱草だと言う。そう言われてみれば、巨大なレッドオニオンを真っぷ たつにたち割り、中をくりぬいたさまに似ている。中には、つくしの先の化け物のような ものが入っている。図鑑で見ると、ザゼンソウというのであった。まわりにいくつもあり、 みな、沢のなかに生えている。

驚くべきことに、葉に花をつける植物がある。木ではハナイカダであるが、草では、エ ンレイソウという名がついている。茎の先に3枚の葉を車輪状に付け、その真ん中に小さ な花を一輪咲かせる。この花のことは聞いたことがあった。ザセンソウの群落を上に辿る と、ひっそりと、目立たないこの草がいくつかあった。つぼみをつけたものと、つぼみの ないものとがあった。

北方野草園には5月5日 (木) に再び来た。午前10時、雨である。 パンフレットを購入する。きれいな黄色い花が沢ぞいに沢山咲いているのは、このパン フレットによると、エゾノリュウキンカというのであった。また、青くて長いきれいな果 穂をつける長さ10cmくらいの草が至る所に咲いていて、その花の一つ一つは、藤の花 のような花であったが、ほとんど開いていない。これも購入したパンフレットによると、 エゾエンゴサクというのであった。

突然、キョキョキョキョキョという大きな声に驚く。すぐ側の木の幹になにやら巨大な はとくらいの大きさのきつつきが縦にとまっている。赤い色が印象に残る。木をつつくこ となく、すぐに飛び去ってしまったのは残念であった。

すぐに、別の鳥の声に、大きな木の梢を見ると、エナガや、コガラと思われる小鳥が枝 をつついている。北海道の道のあちこちにフキノトウが生えていた。

前回も気付いたのだが、ここには、木の下に、大小の枝が沢山落ちている。冬芽がつい ている枝である。サクラやカツラなどであった。関東では見たことがない。なぜであろう か。多分、雪の重みに耐え兼ねて落ちたのだろう。一本、お土産に持ち帰った。 暖かい部屋で花が咲くのであろうか。
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