第4話 (番外編・慰安婦像にデサントの問題)逆に日本人は韓国人女優にエールを。

文字数 2,988文字

              2021・1・29

 先日ソウルの何処だったかに設置された従軍慰安婦像にデサントの服を着せたとして、韓国内で大いに物議を醸したと言う件があった。
 その件で最も問題視された点は、デサントの服が日本製だった事に有るらしい。
 この厳冬の時期である。
 仮にそれが日本製以外の服であったなら、親切な行為だとして、その服を着せた人には称賛の言葉が贈られていたかも知れない。
 しかしデサントが日本の企業だったが為に、その服を着せた人は犯罪者になってしまった。
 市民団体は名誉毀損で警察に告発したのだそうだが、仮にこれを何処の国でも良い日韓以外の国の人が聞いたとして、何故それが名誉毀損になるのか理解出来ない人は少なくない筈。
 但しそれをした人もそう言った事を知らずにやった訳でもなく、像の近くに使い古したデサントの靴や靴下も置いていったらしいので、意図してそうしたのだろう、
 贈られた物総てがデサント製品だったのだから、無意識とは言えまい。
 しかし私はこの件について、市民団体が告発した意図や、それをした人の行為の意図について論じたいのではない。
 何が言いたいかと言うと、この件から見えてくる事実について一考の余地が有ると言う事。

 それは少なからぬ韓国人が、日本人は日本人であると言うだけで生まれた時から犯罪者で、日本製品はどれだけ良い物であっても汚らわしく不実な物、と、思っていると言う事。
 納得出来ない方も多数いらっしゃると思う。
 またこれを聞いた日本人なら、何と理不尽な事なのか、と、憤慨して当然だ。
 無論私も両親共に日本人で、日本生まれの日本育ちの普通の日本人であるから、腹が立たないと言ったら嘘になる。
 しかしそこでやられたらやり返すのだ、と、熱り立ってどうなる?
 不仲の堂々巡りだ。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権下の徴用工賠償問題に、その直後韓国に対して発出された安倍政権下での対韓輸出規制。
 またそれに対抗すべく、G-SOMIA破棄への韓国政府からの言及。
 挙げ句今年に入ってからは、従軍慰安婦賠償裁判での日本政府への有罪判決迄も。
 当然日本政府はその判決に応じなかった。
 また仮にソウルに有る日本大使館の敷地や建物が差押えられる事になれば、世界初の主権免除を反故にした外国大使館への介入となる。
 そうなれば日本政府は国交を断絶するやも。
 しかし仮にそうなったとして、日本国内ではそうした日本政府の態度に称賛を贈り、菅政権への支持率は鰻昇りとなるだろう。
 無論日韓両国とも米国の同盟国なので、そんな事になったら今度はアメリカが黙ってない。
 とは言えそれを理解出来ない韓国政府ではないようで文在寅政権外交部は、「2015年12月の慰安婦合意が両国政府の公式合意と言う点を確認している」、と、コメントを出した。
 今回文在寅大統領は火消しに躍起の様子。
 前回G-SOMIA破棄を主張した際の、米国からのしっぺ返しに懲りたのだろう。
 と、ざっと、やられたらやり返す「倍返し」の施策が、日韓両国政府の外交で行われた結果を羅列してみた。
 お分かり戴けたと思うが、言える事は一つ。
 限りなく不毛である、と、言う事。

 また今回従軍慰安婦像に着せられた服のメーカー、デサント社は現在どうなっているかと言うと、これもまた悲惨だ。
 皮肉にも軸足を韓国に置いてしまったが為、このコロナ禍に不買運動を喰らい売上が激減。
 18年ぶりの最終赤字に陥り、親会社の伊藤忠商事と敵対し物議を醸した創業者の石本氏も、退陣を余儀なくされた上に保有株式を売却したらしく完全に身を引いたと言う事で、社員達は憤懣遣る方無いのだそうだ。
 尤も伊藤忠商事は以前からデサントの前経営陣に対し、韓国に経営資源を傾注し過ぎだと意見していたようだから、経営権を掌握した伊藤忠商事としては今後韓国から徐々に撤退し、軸足を国内もしくは他国に移して行く事だろう。
 やがてデサントの名も、韓国から消え行く運命なのかも知れない。

 そんな昨今の最悪な日韓関係ではあるが、一条の光となったのが、今回韓国でも上映された「劇場版・鬼滅の刃・無限列車」である。
 韓国で上映された結果観客動員数がディズニー映画を抑え、韓国内で1位となった。
 観客の中には、「認めたくないけど、最高だった」、と、言った意見も有ったと言う。

 解決策はこれだと思うのだが、如何か。

 認めたくないけど最高、と。
 我々一般人は日韓両政府のように遣り合うのではなく、認めたくなくても称賛を贈る事こそが今一番大切な事では?
 批判したり、ヘイトスピーチをしたり、或るいはまた遣り返してみたり。
 そんな事をしても何の解決にもならないのは、日韓両政府に於いて証明済ではないか。
 そんな事よりもこんな時期に、勇気を振り絞って日本に渡海し頑張ろうとしている韓国人女優や、自身を在日韓国人と公言し中傷される事を覚悟の上頑張ろうとしている女優を、皆で応援しようではないか。
 応援と言っても何もファンになれ、彼女達を認めろ、と、言うのではない。
 彼女達の演技を観て、「認めたくないけど、最高の演技だった」、と、たとえ認めたくなくても彼女達の出演する映画やドラマを観て、称賛を贈ろうではないかと言っているのだ。

 その前述の韓国から日本に来た女優と言うのが沈恩敬(シム・ウンギョン)で、自身を在日韓国人と公言したのは井川遥こと、趙秀恵(チョ・スヘ)である。
 殊に趙秀恵(チョ・スヘ)に取っては在日韓国人と公言した事が、彼女に取って足枷となっている事は言う迄もない。
 彼女を在日韓国人だったと知って、ファンを止めた人も少なくないと言う。
 しかしそんな狭量な日本人でどうする。
 何故井川遥としてしか応援出来ないのか?
 何故趙秀恵としては応援出来ないのか?
 別に認めなくとも言い、「認めたくないけど、最高の演技だった」、と、言える日本人であるべきではないのか。
 以前の私は井川遥の事を綺麗な女優だとは思っていたが、別段取り立てて言う程彼女のファンでは無かった。
 しかし私は彼女が自身を趙秀恵(チョ・スヘ)と公言して以来、そんな潔い行動の出来る彼女のファンになったのだ。
 つまり私は井川遥のファンではなく、趙秀恵(チョ・スヘ)のファンなのである。
 彼女には誰が何と言おうが、趙秀恵として女優業を全うして貰いたいと思っている。
 何時の日にか彼女の所属事務所も、ドラマや映画の製作サイドや放送媒体も、彼女を井川遥でなく趙秀恵として接する事が出来るようになれれば、と、趙秀恵のファンとしてはそんな日を待ち望むはかりだ。
 また沈恩敬(シム・ウンギョン)も、韓国で活躍していたのに、日本の映画に興味を持ちリスクを承知で渡海して来た。
 昨年テレ朝のドラマ「7人の秘書」で見せた演技は、掛け値なしに素晴らしかった。
 来たる4月9日には富司純子と彼女とのダブル主演の映画、上田義彦監督の「椿の庭」が公開される。
 コロナ禍ではあるが、私はこの映画を鑑賞し
沈恩敬にエールを贈りたいと思っている。
 それと出来る限り欠かさないように観ているNHKの連ドラ、「おちょやん」に井川遥として出演中の彼女にも、エールを贈っている事は言う迄も無い。
 何時も胸中にこう叫んでいるのだ。 

「趙秀恵(チョ・スヘ)頑張れ!」、と。


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