第5話 (番外編・銀座通い議員の問題)辞職すべきは遊びに行ったからなのか?

文字数 3,227文字

              2021・2・03

 政治家達の余りにも稚拙な行為や発言に憤慨したので、発表させて戴く。
 なるべく簡潔に纏めたつもりなので、最後迄お付き合い願えれば幸いである。 

 さて先日より自民党並びに公明党の2与党議員による、銀座クラブ通いが取り沙汰されて物議を醸している件だ。
 結果的に自民党のマツジュンこと、松本純議員、大塚高司議員、田野瀬太道議員の3人は役職を辞した上で離党。
 公明党の遠山の金さんこと、遠山清彦議員は議員辞職した。
 遠山議員に限っては、政治資金収支報告書にキャバクラ等での飲食代を計上していた件も重ねて発覚し、支持母体である創価学会婦人部からの強い突き上げもあって、重い処罰を受ける事になった。
 しかし私はこの件を単に緊急事態宣言下に銀座のクラブに「遊びに行った件」、と、して裁くだけで済ますのは如何なものかと思うのであり、正にこの彼等による「木を見て森を見ない」言い訳をこそ指摘し、では一体何が正解だったのかを世間に問うべきだと思うのである。
 私は遊びに行った事自体を非難するのではなく、何故そのクラブの経営者に対し一刻も早く事業形態を変える事、並びに今のクラブ経営からは撤退すべきである、と、伝えなかった事をこそ非難すべきだと思うのでる。
 それを政治家のくせして陳情を聞いていた等と阿呆な言い訳をするのだから、空いた口が塞がらないと言うか、もう世も末である。

 今回の緊急事態宣言に関しては銀座だけでなく、日本全国に有るクラブ・ラウンジ・キャバクラ・或るいはスナックやガールズ・バー等を、他の純然たる飲食業と一括りにするのは如何なものかと私はずっと思っていた。
 厳密に言えばそれ等は飲食業ではなく、言うならば「疑似恋愛提供スペース」だと、私は思っているのである。
 元来江戸時代より日本には「吉原」を始めとする「遊廓」と言う大人の社交場があり、それは何も金銭を支払って「性的サービス」を受けるだけでなく、金銭を支払って「疑似恋愛」を愉しむ場所としての一面も有った。
 殊に「太夫」と呼ばれる「花魁」は遊女の中でも卓越した存在で、吉原にやって来る旦那衆達に「疑似恋愛」を存分に楽しませた。
 例えば江戸に限って言えば、その「遊廓」が大戦を経て昭和に到り、江戸時代の大火により場所を移した現在の三ノ輪近辺の「吉原」に「性的サービス」を提供する機能だけが残り、必ずしも「性的サービス」を伴わない「疑似恋愛」を提供する場として、銀座や赤坂或るいは六本木のクラブ等へと分化した経緯が有る。
 日本帝國が崩壊し民主化されたとは言え数十年前の昭和の時代には、今とは違いVR(仮想現実)やMR(複合現実)等の技術が存在しておらず、「疑似恋愛シミュレーション」や「疑似恋愛ゲーム」等を愉しめるべくも無かった。
 今やスマホが1台有れば手軽にアイドルや好みの二次元アイドルと「疑似恋愛」が愉しめてしまうが、そんな物が出て来るとは想像だにしなかった時代の事でもある。
 事業に成功した社長連中や况んや今取り沙汰されている政治家達は、銀座や赤坂のクラブへ繰り出す事が唯一「疑似恋愛」を愉しめる方途であった。
 またそれ等の場所は紳士の社交場であると同時に、客を饗す接待の場所でもあったのだ。
 ここで私が問題にしたいのは今の銀座のクラブ等の業態が、リモート等バーチャルな空間で「疑似恋愛」をさせている訳でなく、銀座の飲食ビル内に存在すると言う点だ。
 つまり不動産物件を借りて家賃を払い、また実在する従業員の「ホステス」に給与を支払い、その他莫大な固定費が月々に掛かって来ると言う点の事である。
 もし私がクラブの経営者なら、この何時迄続くか分からないコロナ禍を耐え忍ぶより、業態を変えるか撤退するか、その2択の内のいずれかを選ぶと思う。
 そう思うのには以下のような理由が有る。
 1つはコロナ禍を耐え忍ぶ余力が有るのなら他の事業に経営資源を回したいと言う事、あと1つは仮にコロナ禍が落ち着いたとして、何もかも環境が元戻りになる迄には、果たしてどれ程の時間が必要なのか読めないし、加えてアフターコロナの到来で社会の形態がごっそり変わるかも知れないからだ。
 接待の有り様も全く違う形態になるであろう事は想像に難くないし、それにリモートがこれ程迄に定着したら、仮に二次元ではなく実在する三次元の相手とでも、銀座のクラブに代わる美女との出会いの場等SNS上で幾らでも提供されるからだ。
 加えてクラブの経営者にも増して、銀座等の所謂「花街」にビルを所有するオーナーは、これからが本当に大変である。
 そう言った通常飲食店と異なる「疑似恋愛提供スペース」が立ち行かなくなると、先ずはテナントたるその店が退去する事になる。
 次いでもっぱら「疑似恋愛」を提供し、それなりの対価を貰っていた店鋪だからこそ支払えていた家賃が、異種業態の例えばコロナ対応業態の「1人しゃぶしゃぶ」や「1人焼き肉」の店鋪には支払えない、と、言う事になり、家賃を引き下げなければならなくなる。
 例えばそのビルが個人名義で、このコロナ禍に所有者が亡くなったとする。
 大阪は既に国税庁が路線価を引き下げたが、
東京は未だである。
 その東京で馬鹿高い路線価から算出された相続税を支払わなければならないのであれば、テナントが入らないか或るいは入っても現行の半額近い賃料でしかテナントが入らないのであれば、その被相続人は手段としてもうビルを叩き売るしかない。
 そんな事になると「花街」の不動産価値は暴落し、街の存続自体が危ぶまれる。
 これまた私がビルのオーナーなら空けているよりはマシなので、クラブ等の店鋪が退去後は一刻も早く家賃を引き下げて、コロナ対応業種のテナント誘致に駆けずり回っているだろう。
 とは言え現実に経営者であったら、未練も有るだろうし、中々決断出来ないものだ。
 と、すればである。
 それこそそれ等の問題に対応する事が、政治家の役目なのではないのか。
 で、あればである。

 銀座のクラブ通いをした政治家達は、幾ら美女に頼まれたからと言って、鼻の下を伸ばして同伴出勤をしている場合ではない。
 リモートが無理であれば何なら電話でも良かったではないか。
 そのクラブの経営者に現在の経営環境やアフターコロナ対応について述べ、今後の経営の方向性をこそ論ずべきではなかったのか。
 もしその時クラブのママさんに、「このコロナ禍を何とか乗り切るので、先生にはその時にご来店して戴きたいわ」、等と言われ、「そうだね。頑張ってね」、等と答えていようものなら、それは癌患者に対して手術の可能性に懸けるよりも、座して死を待て、と、言っているのと同義である。
 また話が終わったらその足で自民党本部に戻り、一刻も早く東京でも銀座の路線価引き下げを検討するよう促すべきであった。

 そしてそれは東京だけの問題ではない。
 札幌・仙台・横浜・名古屋・京都・大阪・神戸・博多等、日本全国の「花街」が存在する地域で考慮されるべき問題である。
 殊に京都等は海外からの客足が途絶えて久しく、観光業はもう既に耐えれる限界等とっくに超えている状況だ。
 増してや祇園等は重要文化財に指定されている建物も多数有り、物件を売却しようにも所有者によっては手の打ちようの無い人も少なくない筈である。
 花街と言えども2千年の歴史を誇る祇園街だけは、何とか国を挙げて守って貰いたい。
 これ等は「花街」だからと言って後回しに出来る問題ではないと思うのだが、今回のあの与党議員の体たらくを目の当たりにすると、政治に期待するのは間違いだと言わざるを得ない。

 あぁ、神も仏も無いものか。

 否、神や仏は、あの与党議員達の姿を見て、各々が各々で人の愚かさを知るが良い。
 と、言っているのに違いない。
 政治等に頼らず総ての人が自身を律し、自身で何とかすべき時だ、と。
 
 


 

 
 
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