第18話

文字数 1,383文字

 男が外からあるレストランにいる奏を見て声を出す。

(奏と……一緒にいる女性は仕事の上司か……?)

 男はそう心で呟くと、そのレストランに入っていく。そして、なるべく奏たちの会話が聞き取れるように近くの席に腰を下ろす。


「……へぇ。じゃあ、奏ちゃんの物語の反応はまずまずなのね」

「はい!とてもいいコメントもくださったり、気遣いもしてくれる方で、とてもいい人なのですよ!」

 冴子の言葉に奏が運ばれてきたパスタを美味しそうに口にしながら、投稿している作品にたまに同じ人からコメントが来ることを嬉しそうに話す。

「いいわね♪なんていう人なの?」

 冴子が興味津々で尋ねる。

「レンさんって人です」

「え……?」

 奏の言葉に冴子が声を詰まらす。

「冴子さん?」

 奏がその声に不思議そうにする。

「どうかしましたか?」

「う……うぅぅん、何でもないわ。そう、レンさんって言うのね♪」

 冴子がいつもの表情になり、そう微笑みながら言葉を綴る。

(まさか……)

 冴子が心でそう呟く。

「そのレンさんがとてもいい人なんですよ!とても優しい人なんだなって思います」

 奏が微笑みながらそう言葉を綴る。

「それとですね――――」

 そう言いながら、奏が最近書いている物語の話をする。その話に冴子は聞きながら、心の中ではレンの事が引っ掛かっていた。


(俺の話だな……)

 奏と冴子の会話を盗み聞きしている男がそう心で呟く。

(奏は俺の事をそんな風に思ってくれているんだな……)

 そう心で呟き、席を立つ。

 そして、伝票を手に取ると会計を済ませてその店を出て行った。



「さてと♪後はそいつからアクションがあるのを待つだけだな♪」

 車の中で紅蓮が軽快な口調でそう言葉を綴る。

「とりあえず、一旦署に戻るぞ」

 透がそう言って車を発進させる。

「吉と出るか凶と出るか……」

 槙がそう言葉を発する。

「まぁ、取り付けた装置の反応を待とう」

 透がそう言葉を綴り、署に戻っていった。



「……俺に出来るかな……?」

 賀川が部屋でそう小さく呟く。

 そして、指示された通りの文章を打ち込み、それを送信する。

「……はぁ~……」

 無事にコメントを入れ終わり、賀川が深く息を吐く。

「と……とりあえず飲もう……」

 そう言って、冷蔵庫からビールを取り出し、喉に流し込む。

「……ぷはっ!でも……これで女神は俺に微笑んでくれる……」

 そう呟き、不気味な笑い顔を浮かべる。

「もしかしたら……「ありがとう」って言って抱き締めてくれるかな……?」

 賀川がそう呟きながら「へへっ……へへっ……」と、不気味に笑う。

 そして、例の作戦に向けて次の準備に取り掛かった。



「お帰り♪守備は上々かしら?♪」

 冴子が帰ってきた透たちにそう声を掛ける。

「えぇ♪ばっちりですよ♪」

 紅蓮がそう言いながらピースサインをする。

「……てことは、例の作戦を賀川さんは呑んだってことですか?」

 奏が透にそう声を掛ける。

「あぁ。最初は戸惑っていたが了承したよ。後は賀川に例のコメントを書いてもらって、奴からの反応を待つだけだ」

 透がそう言葉を綴る。

「そう……ですか……」

 奏がその言葉に戸惑うように返事をする。

 一般人である賀川を協力させていいのか……と言う疑問が奏の中で拭えない。場合によっては賀川を危険に晒すことになる。

「さっ♪今日は上がりなさい♪」

 冴子が軽快な口調でそう言葉を綴った。



「……これは?!」



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