第2話

文字数 1,990文字

「「「カンパーイ!!!」」」

 奏たちがそれぞれ飲み物を注文して乾杯をする。

「三人で飲みに来るって久々だね!」

 奏がいつものように日本酒を飲む前の慣らし用の甘めのサワーを飲みながらそう言葉を綴る。

「奏とは二人で飲みに来ることはあるけど、孝君はなかなかそういう機会がないもんね」

 絵美が梅酒を片手にそう言葉を綴る。

「仕方ないじゃん!一人暮らしだもん!仕事もあるし、掃除に洗濯、買い出し……もうやる事一杯で毎日ドタバタだよ!」

 孝が頭を抱える仕草をして悲痛な表情を作りながら言う。そして、「頑張るぞー!」とか言いながらビールをグイっと飲む。

「あははっ!一人暮らしは大変だよね~。まぁ、私も一人暮らしだけど、慣れだね、慣れ!」

 絵美が笑いながら楽しそうに言葉を綴る。

「孝君、一人暮らしはだいぶ慣れてきた?自立のためとはいえ、ずっとご両親と一緒だったから急に一人になって寂しいんじゃない?」

 奏がちょっと心配そうに言葉を綴る。

「うーん……。確かに夜になって話す人がいない寂しさはあるかな?お陰でいろんな友達に電話しまくりだよ……ははっ……」

 孝がどこか遠い目をしながら空笑いのような笑いをする。

「まぁ、いつでも話くらいは聞いてあげるからさ!また電話してくるといいよ」

 絵美が笑顔でそう言葉を綴る。

「あるがとう、絵美さん。助かるよ」

 その言葉に孝がどこかホッとした表情を見せる。

「孝君、昔からどちらかと言うと寂しがり屋だよね。後、広斗さんのこと大好きだったから私と付き合うことになった時は、私、殺されるんじゃないかと思ったよ」

 奏が笑顔でどことなく怖い話をさらっとする。

「その話だけを聞いてると、周りに誤解を招きそうだよね。『孝君と広斗君ってそういう関係だったの?』みたいな感じで」

 絵美が奏の言葉にそう突っ込みを入れる。勿論、昔も今も広斗と孝はそんな関係ではない。高校からの仲の良い友達と言うだけで、変な関係ではないのだが、孝の言葉には『広斗愛』が溢れているような発言が多々見られる。

「広斗さんと付き合い始めた時は大変だったよね。孝君に『僕の広斗を取らないで~』って言われて、私、一瞬誤解しそうになったよ」

「だって……、高校生の時の広ちゃんって可愛くて可愛くて押し倒したいくらい可愛かったんだもん……」

 孝が高校時代を思い出しながら恍惚な表情で語る。

「……でも、孝君には感謝しているよ。すごくいい人と引き合わせてくれて……」

 奏が微笑みながら幸せそうに言葉を綴る。

「まぁ、僕的には二人を引き合わせたらそうなるかな~って予想はあったけどね」

 孝が微笑みながらそう言葉を綴る。

「広ちゃん、元気している?僕はなかなか会えないから、またみんなで会おうねって言っといてよ!」

「うん!分かった!」

 孝の言葉に奏が満面の笑みでそう言葉を綴る。

 それからも楽しい時間は続き、三人でいろいろな話で盛り上がる。


「……はぁ~、楽しかった~♪」

 店を出て絵美が満足そうに言葉を綴る。

「ここの店、良いよね!安いし美味しいよね!」

 奏も満足そうに言葉を綴る。

「……孝君、どうしたの?」

 絵美が様子のおかしい孝に気付いて声を出す。

「いや……何でもない……」

 孝が何処か思案した様子でそう言葉を綴る。

(気のせい……だよね……?)

 孝が心の中でそっと呟く。

「じゃあ、そろそろ帰ろうよ!絵美ちゃん、孝君、今日はありがとう!!」

 満足そうに奏が笑顔で言葉を綴る。

「小説、頑張ってね!」

「うん!頑張るね!」

 絵美の言葉に奏が笑顔で答える。

 そして、駅で絵美たちと別れて家に帰っていった。



「……どういうことだ……?」

 あまり手持ちが無かったので早々に店を出てアパートに戻ると、飲み直しのためにビール缶を手に基頼が恨めしそうにそう言葉を呟く。

「もっちゃん……お腹空いた……」

 夏江がそう言いながら基頼にご飯の支度を催促する。

「食いたかったら自分で作れ!!」

 基頼がそう言葉を吐き出す。

「ふ……ふぇぇぇぇぇん……」

 怒鳴られて怖くなったのか、夏江が泣きだす。

 夏江は年齢でいけば二十代後半だが、知能が遅れていることから中身は小学生低学年くらいの知能しか持ち合わせていなかった。それ故に、基頼が怒鳴るとすぐに泣きだす。

「これでも食ってろ!!」


 ――――パシッ!!


 基頼がそう言って袋に入っているレーズンパンを夏江に投げ付ける。夏江はそれを拾うと、袋を開けてレーズンパンを頬張っていく。

「あっちで食べろ!」

 基頼の言葉に夏江が「ビクッ!」となって、袋を持ったままその部屋を出て行く。

(あの会話だと……そういうことだよな……?)

 瞳を鈍く光らせながら、ビール缶を潰れるくらいの力で握り、顔は怒りで満ちている。

「俺を捨てたことの報いは受けさせてやる……」

 基頼が悪魔のような笑みを浮かべながら、小さく呟く。


「全部ぶち壊してやるからな……奏……」


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