第14話

文字数 1,619文字

「……それ、本当なの?」

 眞子が話した言葉に紅蓮がそう聞き返す。

「はい!だから頑張らなきゃ!!」

 眞子がそう言って「やるぞー!」と握り拳を作りながら気合のようなものを入れている。そして、眞子にお礼を言って紅蓮と透はカフェを出た。


「……さっきの話、どう思う?」

 署に戻るための道を歩きながら透がそう言葉を発する。

「もし、その話が本当だとしたら、どこでどうやってそれを手に入れたかだな……」

「……もしくは、自分で作ったか……」

 紅蓮の言葉に透がそう言葉を綴る。

 先程の眞子の話にいろんな考えが巡る。

 思わぬところでその名前が出てきて、信じられない気持ちになる。

 いろんな感情が蠢きながら、紅蓮と透は署に戻っていった。



「……何か気になる事があるんですか?」

 奏が槙にそう問いかける。

「……いや」

 槙はそう答えるものの、違和感が拭えない。麗美の番号を頼りに事件の手掛かりを探している際に引っ掛かりを感じたが、気のせいかも知れない……。

 その時だった。

「戻ったぜー」
「戻りました」

 紅蓮と透が特殊捜査室に戻ってきた。

「どうだ?そっちは何か分かったか?」

 紅蓮が槙にそう話しかける。

「あぁ……。まぁ、この麗美って女、客の確保のためか、何人もの男とホテルの約束を取っているな。零士とのやり取りは恐らく消去したんだろ。そいつとのやり取りの記録は無かった」

「ちなみに、下井っていう名前はあったか?」

 槙の言葉に透がそう尋ねる。

「いや?その名前は無かったが?」

 槙の言葉に紅蓮が先程聞いた眞子の話をする。

「……もしかして」

 槙がその話を聞いてあるソフトを引き出しから取り出し、それをパソコンにセットする。


 ――――カタカタカタカタ……カタカタカタカタ……。


 槙がリズムよくキーボードを叩いていく。


 ――――カタカタカタカタ……カタカタカタカタ……。


 奏たちがその様子を見守る。


 ――――カタカタカタカタ……カタン……。


「……やっぱり」

 解析が終わって槙が画面に出てきた画像を見てそう声を出す。

「違和感はこれだったんだな……」

「どういうことだ?」

 槙の言葉に紅蓮がそう尋ねる。

「番号を元に解析したときに、何か引っかかりを感じたんだ。このやり取りだけ、別で厳重にロックがかかっている。だが、何かがあって削除をした形跡が見つかった。多分、このアドレスがその下井って奴のアドレスなんじゃないか?」

 槙がそのアドレスに指を差しながらそう言葉を綴る。そのアドレスは始まりに「yosikazu.s@……」で始まっている。下井の名前と一致するので間違いないだろうという事になる。

 そして、そのやり取りのメッセージを確認していく。

「……おい、これじゃないか?」

 槙が一つのメッセージを見つけてそう声を出す。

「……あぁ、これだな」

 紅蓮がそのメッセージを確認してそう声を出す。

 そのメッセージには麗美が下井が遺体で見つかったホテルが記載されていた。部屋の番号も指定してあったので、間違いないという事が分かる。

「本山さんに連絡するわ!」

 冴子がそう言って本山にこの事を電話した。



 ――――チリーン……。

 クラブ「フェリチタ」のドアベルが鳴ってママが顔を出す。

「……あの、まだ開店していないのですが……」

 ママが入ってきた二人組の男にそう声を掛ける。

「警察署の本山です」
「同じく、杉原です」

 本山と杉原が警察手帳を見せながらそう言葉を綴る。

佐沢(さざわ) 麗美(れみ)はいますか?」

「え……えぇ……」

 本山の言葉にママがそう言って奥にいる麗美を呼びに行く。

「あ……あの……」

 ママに連れられてやってきた麗美が本山達に不安そうに声を出す。

「下井の件で署に任意同行を願えますか?」

 本山の言葉に麗美の顔がサッと青くなる。

「わ……分かりました……」

 麗美が震える声でそう言葉を綴る。そして、本山と杉原は麗美を署に連れていった。その様子を眞子は遠目で眺めていた。



「……単刀直入に聞く。下井を毒殺したのか?」
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